節分の食卓に。 福を呼ぶ、薬膳恵方巻のレシピ

「季節を分ける」と書いて「節分」。
毎年立春の前日が節分の日とされ、2024年は2月3日がその日にあたります。

節分の行事食、恵方巻。「恵方」とは、福徳を司る神様「歳徳神(としとくじん)」がいらっしゃる方角のことを指します。2024年の恵方は「東北東(東北東微東)」。その年の恵方に向かって物事を行うと吉といわれており、恵方巻も恵方を向いて食べると縁起が良いとされています。

今年は1年の無病息災を願う日にぴったりな、「薬膳恵方巻」を作ってみませんか。
「薬膳」というと特別な材料が必要なイメージがあるかもしれませんが、スーパーで手に入る材料だけで作ることができます。
ご自宅で簡単にできる薬膳恵方巻のレシピを料理家の江口恵子さんに教わりました。



おいしく、彩り豊かに
身体が喜ぶ恵方巻

いつもの食卓に並ぶ野菜も、肉も、魚も。
薬膳の考え方では、すべての食材に効能があるとされています。

今回は、その中でも「五色」という考え方に基づき、恵方巻の具材を選びました。
五色とは、赤・黄・白・緑・黒の食材をバランスよく食事に取り入れ、身体を整える考え方です。

今回使用する食材の効能について、江口さんに伺いました。

・マグロ (赤)...活力を養い、心身共に元気づける。貧血や頭痛にも効果があり、動脈硬化予防も。
・クコの実 (赤)...滋養強壮、疲労回復効果。かすみ目、視力減退、めまい、ふらつき、耳鳴りの改善効果。
・卵 (黄)...卵黄には体を潤し、虚弱体質、体力回復、貧血改善の効果がある。卵白には、解毒、熱を冷ます作用があり、目の充血、喉の痛み、咳を鎮める効果がある。
・松の実 (白)...滋養強壮。腸、肌、髪に潤いを与える。咳や喘息、乾燥性の便秘を改善する効果も。
・きゅうり(緑)...利尿効果、むくみ防止。
・黒米(黒)...滋養強壮、アンチエイジング。アントシアニンが含まれるため、眼精疲労やかすみ目の回復にも。
・干し椎茸 (黒)...気を養い、消化器の働きを整えて食欲増進させる。血圧やコレステロール値を下げる効果も。

「クコの実や松の実は特に薬効が強い食材とされています。
黒米を入れることで全体の彩りがより華やかに。マグロの赤色は邪気を払うとも言われ、節分にもぴったりな食材です」(江口さん)

【材料】3本分
焼き海苔(全型)... 3枚
米 ...2合
黒米...大さじ2
きゅうり...1本
マグロのお刺し身(柵)...120g

合わせ酢
米酢 ... 大さじ 3
砂糖 ...大さじ 1.5
塩 ... 小さじ 3/4

干し椎茸とクコの実の甘煮
干し椎茸...6枚(約10g)
クコの実...小さじ2
松の実...大さじ1
酒、みりん、きび砂糖、醤油...各大さじ2

厚焼き玉子
卵 ... 3 個
砂糖 ... 大さじ1
みりん...小さじ2
醤油... 小さじ 1 と 1/2

「砂糖はきび砂糖の方が、甘さが穏やかで旨味がありおすすめですが、ご家庭にあるものでも構いません。白砂糖の場合も分量は同じです」(江口さん)

【作り方】
■干し椎茸とクコの実の甘煮

(1)干し椎茸とクコの実は150 cc の水に30分ほどつけてしっかり戻す。干し椎茸は石づきを取って1センチ幅に切っておく。

(2)戻し汁と調味料を鍋に入れて火にかける。沸騰したら、干し椎茸とクコの実、松の実を加えて10〜15分ほど煮汁が少なくなるまで煮る。

■厚焼き玉子

(1)卵をボウルに割り入れ、泡立てないよう箸で溶きほぐす。調味料を加え、箸で溶かすように混ぜ合わせる。

(2)温めた卵焼き器に油をなじませ、卵液の 1/3 量ほどを入れて全体に広げる。焼けてきたら、卵を粗く巻き、奥側に寄せておく。
残りの卵液の半量を注ぐ。巻いた卵を箸で持ち上げ、卵焼き器を傾けて、卵液を巻いた卵の下にも流し込む。焼けてきたら卵を奥から手前に巻いていく。残りの卵液で同様にもう1回卵を巻く。弱火にして両面を各 1 分ずつ焼く。

(3)厚焼き玉子を棒状に切っておく。(1㎝程度の幅が目安)

「冷めるまで少し時間を置いて落ち着かせると切りやすくなります」(江口さん)

(4)きゅうりとマグロも厚焼き玉子と同様に棒状に切っておく。(1㎝程度の幅が目安)

■寿司飯
(1)白米と黒米を洗って30分浸水させる。一旦水気を切ったあと、炊飯器の内釜に入れ、2合分の水を注ぎ、通常の炊飯モードで炊く。

(2)ご飯が炊きあがったら、合わせ酢の材料を混ぜたものを回しかける。寿司飯を切るようにして混ぜて粗熱をとる。
「炊き立ての状態で混ぜていただく方が、味が馴染みやすいです」(江口さん)

■巻き方

(1)巻きすを広げ、海苔1枚を光沢のある面を下にしてのせる。海苔の奥 2 ㎝ほどを残して、寿司飯の1/3量をまんべんなく広げる。

「海苔の縦横の向きは、中に入れる具材の量次第で使い分けると巻きやすくなります。今回は具材が多いので、奥行きが長くなるように使います」(江口さん)

「寿司飯は、お米の粒を押さえつけないように広げるイメージで平らにまんべんなくのせていきます。指を添えながら海苔の端までしっかりと広げるのがポイントです。しゃもじにお米がくっつくため、適宜水で濡らしましょう」(江口さん)

(2)ごはんの中央より少し手前に具材をバランスよくのせる。

「クコの実などの細かい具材は玉子やマグロの間に埋めるような形でのせていくと、バラバラになりづらく巻きやすいのでおすすめです」(江口さん)

(3)具材をのせたら、手前の海苔を巻きすごと持ち上げ、巻いていく。

「まず、人差し指と親指で巻きすを持ち、残り3本の指で具を抑えます。手前の海苔の端を、具材の終わりに持っていくようなイメージで巻きます。少しバラバラとなっても気にしなくて大丈夫。そこで一度ぎゅっと抑えます」(江口さん)

「このあとのポイントは、巻きすを無理に巻こうとしないこと。片方の手は巻きすの先端を持ち、テーブルに対して平行に、巻きすを向こう側に引っ張るイメージで動かします。もう片方の手は太巻きに手を添えるイメージです。最後まで巻けたら、そこでもう一度ぎゅっと抑えて整えます」(江口さん)

「恵方巻は、1本そのまま食べるのが良いと言われていますが、切り分ける時は、切るたびに包丁を濡れ布巾で拭くときれいに切れます。ラップで包んでから切ると、さらに切りやすいので試してみてください」(江口さん)

ご自宅で手軽に作れる「薬膳恵方巻」。
1年の無病息災を願い、今年は身体想いの恵方巻を作ってみませんか。


natural food cooking/ORIDO 江口恵子(料理家・フードスタイリスト)
雑誌、広告、WEB、食品メーカーのレシピ提案、料理撮影に携わる。また、料理教室、ケータリング、カフェ、とあらゆるシチュエーションで野菜たっぷりの美味しくて体に優しい料理を伝えるべく活動を続けている。

『作って伝える郷土ほっこりおやつ』(赤ちゃんとママ社)
『子どもと一緒に季節の食しごと&保存食』(マイナビ出版)

natural food cooking
ORIDO

2024年2月2日公開