ていねいに、こころ豊かに。
涼を感じる「梅仕事」レシピ

ころんとした青くて硬い大粒の実。
スーパーや八百屋の店頭に青梅が並び始めると
暑い季節の訪れを感じます。
“この夏も元気に乗りきることができますように”
そんな想いを込めて
ていねいにゆっくりと
梅仕事を楽しんでみませんか。


できあがっていく様子を
じっくり楽しむ「梅仕事」

中国から日本に伝わった季節を表すことばに「梅雨」があります。
梅が熟すころに降る雨が語源の梅雨。
5月から7月の梅は、雨の恵みをたっぷりと吸収して大きな実をつけます。
畑仕事を生業としていた昔の人々は、「雨の日こそ梅仕事」と、自家製の梅干しやしょうゆ漬けなど、一年中味わうことのできる保存食作りに勤しんでいたようです。
出来あがっていく様子を愛で、香りで食べごろを確かめて。
ていねいな時間を楽しむ梅仕事は、初夏の風物詩でもあります。

簡単においしく。
初めての「青梅の甘露煮」づくり

甘く熟す前に収穫される青梅は、梅本来のすっきりとした味わいが魅力。
その旨みを最も楽しむことができるのが青梅の甘露煮です。
ほんのり甘くて、ふんわりやさしい食感。
初めてでも簡単においしく青梅を使った甘露煮をつくることができるコツとレシピを、料理研究家の和田千奈さんに教えてもらいました。

【材料】 作りやすい分量
青梅 500g
砂糖 400g(青梅の80%が目安)
※上白糖、グラニュー糖、黒糖などお好みでご用意ください。
水 800ml程度

【必要な道具】
竹串
…ヘタ取りに使用。
清潔な剣山や縫い針
…青梅の表面に穴を開けるのに使用します。細い針が向いています。

…ホーローや土鍋(金属製の鍋は梅の酸で腐食したり、成分が梅にうつってしまうのでご注意ください)
保存容器
…型崩れしないようになるべく浅くて広い口のものをご用意ください。

【作り方】

(1) 梅を洗って水気を拭き取った後、青梅の頭にあるヘタを竹串で使って1個ずつ取っていく。
※ヘタは苦みのもとになるのでできるだけきれいに取り除いてください。

(2) 細い針や剣山で青梅の表面全体にまんべんなく穴を開ける。
※写真は和田先生お手製の道具。割り箸に4本の針を料理用たこ糸などの丈夫な糸で縛って固定したもの。「針先の数が多いと一度にたくさんの穴が開くので時短にもつながります」(和田先生)

(3) たっぷりの水に(2)を入れて約2時間アク抜きをする。

(4)(3)をザルに上げて鍋の冷水を流した後、青梅にかぶるくらいの水を入れ、弱火で熱する。人肌くらいの温度が適温。熱くなった鍋底が青梅に直接ふれないように手でゆっくりと混ぜながら茹でる。

(5)お湯が熱くなって手で混ぜるのが困難になったら、火を止めて静かにお湯を捨てる。
※お湯の熱さは50度が目安。一気に温度が上がると梅の皮が破れてしまうので注意が必要です。

(6)(4)と(5)を3〜4回繰り返してアクを抜く。
※3回繰り返した後、茹で汁を少し舐めてみてまだ苦みを感じるようなら4回目のアク抜きをしてください。

(7)アク抜きした青梅をザルなどに優しく上げて水気を切る。つぶれたり、傷がつかないように、鍋底に重ならないように並べた後、水800mlと1/3の量の砂糖を加えて弱火で熱する。

(8)アクが出たら取り除き、キッチンペーパーかクッキングシートで落し蓋をして約5分煮る。
※ゆっくり徐々に温度を上げていくのがポイントです。急に温度を上げてしまうと梅がびっくりして皮が破けてしまいます。
※沸騰させるのもNGです。火加減には十分に注意しましょう。
※目を離さずに煮ていきます。「煮る」というよりも「温める」ようなイメージで火入れをすると皮が破けにくいです。

(9)残りの砂糖の半量を入れて再び約5分煮て、残りの砂糖を加えた後にさらに約5分煮る。火を止めた後は粗熱が取れるまでそのまま冷ます。

(10)清潔な保存容器に青梅の甘露煮を1粒ずつ重ならないように置き入れる。煮汁は煮立たせてアクを取った後、軽く煮詰めて容器に注ぐ。

青梅の甘露煮を冷蔵保存することで
こなれた質感、味わいに

作りたてでも十分に食すことができますが、青梅独特の酸っぱい印象が残ります。冷蔵庫で少し冷やたほうが甘みがなじんでくるのでおいしさが引き立ちます。なお、梅干しや梅酒などと違って長持ちするものではないので、保存状態に応じておよそ2か月を目安に食べきるようにしましょう。



青梅の甘露煮のアレンジレシピ
「梅のティラミス」

青梅の甘露煮をデザートのアクセントにすることで夏らしい爽やかな味わいに。
生地に青梅の甘露煮のシロップを加えてつくる「梅のティラミス」は、カステラのしっとりした甘みとクリーミーな食感、甘酸っぱい甘露煮のハーモニーがあとを引く、おやつにおすすめの一品です。

【材料】(4個分)
生クリーム 120ml
砂糖 20g
マスカルポーネチーズ 100g
レモンの皮(すりおろす) 少々
カステラ 4切れ
梅の甘露煮 4粒
甘露煮のシロップ 大さじ4
ミント(飾り用) 少々

【作り方】

(1)生クリーム、砂糖を合わせて7分立て(角が立つぐらい)に泡立てる。マスカルポーネチーズ、すりおろしたレモンの皮(飾り用に少量取っておく)を加えて泡立て器で混ぜ合わせた後、冷蔵庫で冷やしておく。
※レモンの皮を少量加えることで、甘くなりすぎず爽やかな風味になります。
※冷蔵庫で冷やすのはひんやり食感を楽しむことが目的ですので、10~15分程度で大丈夫です。

(2)カステラを食べやすい大きさに切り、梅の甘露煮の煮汁(1個につき大さじ1程度)をカステラに染み込ませる。

(3)カステラの上に(1)でつくったクリームをのせてスプーンの背などで表面を整えた後、梅の甘露煮を1粒ずつのせる。香りづけに残しておいたレモンの皮をふりかけて好みでミントものせる。
※クリームの表面を整える時は、おさえつけるのではなくふんわりとならすように整えるのがポイントです。

青梅の甘露煮は、梅のティラミス以外にも、ゼリーにしたり、ジャムにしたりとさまざまな楽しみ方があります。

すがすがしい色合いとさっぱりとした甘み。夏の訪れに心躍らせながら、青梅の甘露煮づくりに挑戦してみましょう。

株式会社ワンボックス 代表 料理研究家 和田千奈

雑誌、ウェブ、書籍、企業販促用のメニューやレシピの開発、フードスタイリング、デモンストレーションを含む料理教室講師などを幅広く手掛ける。
著書に『毎日 みそ汁 からだ改善レシピ』『4つのスパイスだけで作れるカレーなレシピ』『スープジャーで楽ウマお弁当』 (以上、DIA Collection)など。
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2022年6月22日公開