「苔テラリウム」の作り方・育て方。
キットを使って、おうちで愉しく。

雨の多い季節は、その日のお天気によって気分が左右されることも。
室内で過ごすことが多くなる時季、お部屋に緑を取り入れて、気分転換。

季節や場所を問わずに緑の癒しに満たされる、小さな森の世界「テラリウム」。
机の上に、棚に。心が安らぐ空間を作ってみませんか。



世界にひとつ。
ガラスの中で育てる小さな森

「テラリウム」は、ラテン語で“大地”の意味をもつ「テラ(terra)」と“場所”を意味する「アリウム(-arium)」を合わせた造語です。

テラリウムの歴史は意外にも古く、19世紀のヨーロッパの時代に始まったと言われています。200年の時を経た現在、テラリウムは苔を使った苔テラリウム(モステラリウム)や木々の破片なども使って森を作るなど、さまざまなスタイルが生まれ、世代を問わず人気となっています。

遠くへ足を運ばなくても、テラリウムで自然の癒しを身近に感じることができます。置き場所をとらず、こまめに水やりをする必要もないので、ご自宅で気軽に育てることができるのも魅力です。



市販のキットで簡単にできる
「苔テラリウム」の作り方

「テラリウム」は園芸店などで完成品を購入するほかに、自分で作る事もでき、キットも市販されています。今回、キットを使った初心者でもできる苔テラリウムの作り方をご紹介します。

作る前に容器を選ぶことからはじめます。
容器は「セミオープン式(容器と蓋の間にわずかな隙間があるタイプ/写真左)」と「クローズド式(蓋をして密閉するタイプ/写真右)」の2タイプがあり、初心者には育てやすい「クローズド式」がおすすめです。
蓋をせずに育てる方法もありますが、環境や水質などの調整が難しいため、一般的にはおすすめしません。

【材料】
〇使用したキット
苔むすび 【ベーシック編】苔テラリウム制作キット(ツール付き)

〇キットに含まれているもの
・ガラス容器
・簡易スプーン ※写真のものは別売りのスプーンです
・簡易ピンセット
・汎用化粧砂
・石(クオーツ石、ブラウンロック)
・苔3種類 ※種類はタイミングにより異なります
・用土
・霧吹き
・水差し
・作り方の冊子
・育て方の説明書

〇ご自身で用意いただくもの
・割り箸
・ハサミ(小さめが使いやすいです)
・ティッシュペーパー


【作り方】


(1)容器に土を2~3㎝の高さになるまで入れます。土を入れたら、容器を軽く揺らして表面を平らにします。


(2)土の上に大きめの石を配置していきます。石が土に少し埋まるよう、軽く押しながら置いてください。
※石の個数はお好みです。苔を植えるスペースが残るように置いてください。
※小さめの石のみでも構いませんが、高低差のある配置の方がバランスが良く、見栄えがします。


(3)石の配置を決めたら、土を足していきます。特に石の後ろに土を足して、石がずれないよう安定させます。
この時、容器の前側には足さず、後ろ側のみに足して、地面が坂になるようにします。傾斜がある方が完成したときに奥行きが出て、見栄えがします。
土を細かく整えたいときは、割り箸の先を使うとやりやすいです。
※キットの土はすべて使い切る必要はありません。


(4)次に土を固定します。
まずは水差しを使って土の表面全体がしっかりと湿るように水をかけていきます(20ml程度、水差しの目盛り2つ分が目安)。石にも水をかけて構いません。

水をかけたら1分ほどそのまま置いて固めます。
その後、苔を植えやすくするために、割り箸の先の太い方で軽くぽんぽんと土の表面を押さえます。押し固めるというよりも優しく表面に触れる程度で大丈夫です。
※苔を植えている最中に途中で土が崩れてきたら、同様に割り箸で押さえます。


(5)いよいよ苔の植え付けです。苔は空気に触れていると乾いてくるので、霧吹きで時々水をかけながら作業します。

塊になった苔は1本ずつ割いて、頭をそろえて束ね直します。
束ねた苔の根元の部分をハサミで切り揃えます。1㎝くらいは土に植え込むので、植えたい高さ+1㎝のところで切ります。


(6)茎とピンセットが並行になり、苔の先端とピンセットの先が揃うように苔を摘みます。
そのまま土に垂直に1㎝程度差し込みます。浅すぎると苔がとれやすくなるので、しっかりと深く差し込みます。
ピンセットを抜くときは周りの土が崩れないように、大きく広げ過ぎず「緩める」感覚で抜くようにしましょう。
※ピンセットを抜くときは苔が一緒についてこないように苔を軽く指で押さえても。


(7)全体のバランスを見ながら小石や化粧砂を適宜入れていきます。化粧砂はスプーンを使って、容器を傾けながら少しずつ入れていくのがポイントです。
※化粧砂を入れるときは上から振りかけるのではなく、入れたいところに置くという感覚で加えていきます。道をつくるような感じで置くと素敵になります。
※化粧砂は乾いたままだと流れてしまうので、置き終わった後に霧吹きを使って表面を湿らせて固めてください。


(8)バランスを見ながら苔を足していきます。
景色が完成したら、最後にまんべんなく霧吹きで表面を湿らせて、ガラスについた水滴をティッシュで取り除いてあげたら完成です。




長く、楽しく愛でるために。
「苔テラリウム」を育てる際のポイント

育てる手間が少ない「苔テラリウム」ですが、長く楽しむためには育てるコツがあります。「苔むすび」の代表であり、苔のスペシャリストである園田純寛さんに育てる際のポイントをお伺いしました。

〇置き場所
直射日光の当たらない明るい場所に置きましょう。
苔は暗くてじめっとした場所で育つイメージがありますが、実はある程度の明るさが必要です。苔は光をエネルギー源にして生きています。

ただし、直射日光は熱がこもりすぎてダメージを与えてしまうので、日差しを避けた窓辺など明るい場所を選んで置くようにしましょう。日光ではなく、部屋の照明やスタンドライトでも構いません。その場合、オフィスなど長時間明かりがついている場所がおすすめです。

〇水やり
水やりの頻度は容器によって異なります。


クローズドタイプは、水が逃げにくいので、霧吹きで2〜3週間に1度程度。
※土がかなり乾燥している場合は水差しで土にしっかり水を補充しましょう。


セミオープンタイプは、水が比較的逃げやすい作りなので、水差しで1週間に1度程度。土を湿らせるイメージで十分に水をあげましょう。

頻度はあくまで目安ですので、土の状態を見て、乾いているときにあげてください。一部の例外的な苔をのぞいて、干からびてもすぐに枯れることはないので、それほど神経質に水やりをしなくても大丈夫です。
水をあげすぎて土から水が染み出ている場合は、ティッシュなどで軽く拭き取ってください。

※水は水道水で大丈夫ですが、硬度が高いエリアの水は苔が傷む可能性があるため、精製水などを用いるといいでしょう。
※水やり後はガラスについた水滴をティッシュで拭き取ると水垢がつきにくくなります。

〇蓋について
蓋は閉めっぱなしが基本です。ガラスの曇りを取りたいときなど、一時的に開けてあげてもよいですが、水が逃げるため、その場合は水を多めにあげましょう。

〇苔のケア
苔が伸び過ぎたら一度取り出して古い根本の部分を切り、土に差し直します。先端を切っても問題はありませんので、茶色くなるなど傷んだ箇所が出てきたらカットして取り除いてください。

苔の先端に白いカビが出た場合はその部分を取り除けば問題ありません。
カビが広がったり、苔がどんどん茶色く枯れたりする場合には、「ベンレート(殺菌剤)」を1000倍に希釈してかけてあげてください。予め「ベンレート」を備えておくと安心です。

枯れてしまった苔は、復活しにくく、菌の温床になりやすいため、取り除いて新しい苔を植え替えたほうが良いです。市販品ではない苔や土を使用すると菌が多く、どうしてもカビが生えやすくなるのであまりおすすめはできません。

育てているときに、稀にきのこが生えてくることがあります。苔に害はありませんが、いずれ腐ってしまうため、笠が開く前に取り除きましょう。

苔や土、石など自然の産物に直接ふれることで得られるのは、豊かな時間とリラックス感。あなただけの苔むす小さな森作りを楽しんで。



苔むすび
鎌倉を拠点に、苔の教室や苔を使った作品展開を行う苔の専門店。テラリウム初心者向けの「苔テラリウムワークショップ」も開催しており、人気を集めている。オンラインショップでは苔テラリウムの材料やツールを購入することができる。

【住所】神奈川県鎌倉市由比ヶ浜2丁目4-22
【電話番号】0467-38-8136
【営業時間】13:00~17:00
【定休日】火曜日・金曜日

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2022年5月27日公開