簡単においしく、華やかに。
福を呼び込む、初午(はつうま)いなり

2月は「初午(はつうま)」という行事があるのをご存じでしょうか。
旧暦の3月にあたる2月は、ちょうど田んぼに苗を植え、畑に種をまく準備を始める頃。「今年もおいしい米や穀物がたくさん実りますように。」
日本では、いつしか豊作の願いを祈念するこうした習慣ができたそうです。


「初午の日」は一年でもっとも運気が高まる日という説も

立春の日を迎えて春を目前にした初午の日は、一年で最も運気が高まる日という説もあります。

一説によると初午は、京都の伏見稲荷大社に祀られる農業神の神様が伊奈利山(いやりやま 京都市東山連峰)に降臨された日とされ、毎年初午の日に五穀豊穣を願って参拝するようになりました。

伏見稲荷大社は、全国にある稲荷神社の総本宮。稲荷神社では神の使いとしてキツネが祀られており、油揚げが好物と考えられています。いなり寿司は、そうした稲荷神社へのお供え物として広く知られるようになり現代に至ります。

「初午いなり」は初午の日に食べるいなり寿司のことですが、願いの数だけいなり寿司を食べるとご利益があり、また、命の「い」・名を成すの「な」・利益が上がるの「り」の文字にならって、いなり寿司を3つ食べるのがよいとも言われています。

「初午いなり」にちなみ、料理研究家の田中優子さんに考案いただいた、身近な食材をちょっと加えるだけで、おいしくて目にも楽しいいなり寿司の簡単レシピをご紹介します。




具材を見せて楽しく華やかに。
簡単にできる「オープンいなり」

初午の日だけでなく、一年を通しておいしく味わえるのがいなり寿司の魅力です。甘く味付けしたお揚げの中に酢飯を詰める王道のいなり寿司もおいしいですが、華やかに盛り付けた具材の彩りを楽しむ「オープンいなり」作りをしてみませんか。

■ベースとなるいなり揚げと酢飯の作り方
今回2種類のオープンいなりの作り方をご紹介しますが、下準備としてその両方に共通して使用するいなり揚げと酢飯を作ります。

いなり揚げ

【材料】12個分
油揚げ 6枚
<A(調味料)>
だし汁 150cc
砂糖 30g
みりん 大さじ1
しょう油 大さじ2

【作り方】

1.油揚げは菜箸や麺棒など長さのある棒を優しく転がして全体をしごき、袋状に開きやすくし、その後に半分に切る。

2.油揚げを熱湯にくぐらせて油抜きをします。お湯をかけて油抜きをするよりも沸騰した湯にくぐらせることでしっかりと油を抜くことができます。


3.フライパン(または浅鍋)に油揚げとAの調味料を入れ、落とし蓋をして煮含めていきます。強火で沸騰させた後、弱火にして煮汁がなくなるまで煮含める。途中でひっくり返して両面に味がつくようにします。

【ポイント】
・3.の工程は、油揚げは入れた形のまま煮上がるので平らに整えて置いていくのがポイント。
・調味料は、酢飯に混ぜる具材の味を引き立たせるために甘さ控えめに作ります。

酢飯

【材料】12個分
米 2合
昆布 5×5cm 1枚
<A(合わせ酢)>
酢 50cc
砂糖 大さじ2
塩 小さじ1/2

【作り方】
1. 後で酢を混ぜることを考えて水加減は炊飯器の通常よりも5~10%減らし、昆布を加えて米を炊きます。※炊飯器にすしめしモードがあれば選択して炊飯

2. ご飯が炊き上がったらすし桶にご飯を移し、Aの合わせ酢をご飯全体にかけて、切るように10分以内に酢合わせをします。

【ポイント】
・すし桶がない場合は、ボウルで作っても手早く混ぜ合わせても。
・混ぜ合わせるときは、うちわであおいで水分を飛ばします。

■アレンジ1)かりかりの食感がアクセント「じゃこいなり」「じゃこいなり」の酢飯に混ぜる具(左)とトッピング(右)

【材料】6個分
ちりめんじゃこ 大さじ3
サラダ油 大さじ1
大葉 3枚
刻み甘酢しょうが 大さじ1
白ごま 大さじ1/2

いなり揚げ 6枚
酢飯 1合分

<トッピング>
スライスしたきゅうり 6枚
カニかまぼこ 3本
とびっこ 大さじ3
炒り卵 卵1個(半分は「れんこんいなり」で使用します)

【炒り卵の作り方】
卵を溶きほぐし、だし汁小さじ2、砂糖小さじ1/2、塩少々を加える。フライパンにサラダ油小さじ1を入れて熱し、調味料を加えた溶き卵を入れたら弱火にして時々火から外しながら菜箸4本で混ぜて火を通します。

【作り方】
1.サラダ油でちりめんじゃこをカリッとなるまで炒めペーパータオルの上で油を切ります。

2.大葉を千切りにし水にさらしてアクを取った後、水気を絞る。

3. 酢飯と1.と2.、刻み甘酢しょうが、白ごまを混ぜ合わせます。

4.3.を軽く握り、自立するように底の形を整えながらいなり揚げに詰めます。トッピングを載せるので、詰め込みすぎずに上部を少し空けておく。

【ポイント】
・ちりめんじゃこは炒ることで香ばしさもアップし、食感にアクセントが出ます。
・カニかまぼこは、ボイル海老でも。

■アレンジ2)歯ごたえも楽しい「れんこんいなり」「れんこんいなり」の酢飯に混ぜる具(左)とトッピング(右)

【材料】6個分
いなりあげ (煮含めたいなり揚げの切り口から2㎝を切り取り、細かく刻んだもの)
三つ葉 1つかみ(約17g)
白ごま 大さじ1/2
柚子 少々

<甘酢A(甘酢れんこん)>
れんこん 6枚(50g)
酢 大さじ4
砂糖 大さじ2
塩 小さじ1/3
だし汁 大さじ3

いなり揚げ 6枚
酢飯 1合分

<トッピング>
炒り卵 1/2個分(じゃこいなりの残り)
うなぎの蒲焼 6切
万能ねぎ 適量

【作り方】

1. れんこんを薄くスライスします。鍋に水を入れ水の状態かられんこんを入れて茹で、沸騰したらざるに上げます。

2.れんこんは穴と穴の間に切り込みを入れて花のような形状に。

3.混ぜあわせた甘酢Aにれんこんを浸して冷めるまで漬け込みます。切り離したれんこんも具材にするので一緒に入れましょう。


4. 煮含めたいなり揚げの上部(切り口側)2㎝を切り取り、細かく刻みます。
三つ葉は1㎝幅にカットしてラップをした後、電子レンジ600Wで1分弱加熱。粗熱がれたら水気を絞ります。
柚子は表皮を千切りにし酢飯に上記の材料、甘酢れんこんと白ごまを混ぜ合わせる。

5.「じゃこいなり」の4.と同じ工程でいなり揚げに詰める。

【ポイント】
・Aの甘酢れんこんは、漬けておく時間がありますので、ご飯が炊き上がるまでの時間を利用して作っておくことをおすすめします。

■いなり寿司の上にトッピングをして完成!
れんこんいなり(左)とじゃこいなり(右)

1. 詰め終わったじゃこいなり、れんこんいなりを並べておくとトッピングがしやすいです。

2. れんこんいなりは、炒り卵を敷いてうなぎの蒲焼を立てるように載せた後、花れんこんを添えます。
じゃこいなりは、炒り卵を敷いた後、カニのかまぼこ、きゅうりのスライスの順に盛り付け、最後にとびっこを乗せて色どり鮮やかに。

3.お皿や弁当箱などに盛り付けて完成。

いなり寿司を作ったときに余った酢飯(具材入り)は、ラップを使って手まり状に握っても。

見た目の華やかさだけでなく、食感も楽しいオープンいなりは、時短で簡単に作ることができるのも魅力。今年の初午の日は2月10日。いなり寿司のご利益にあやかって、食べて福を呼び込みましょう。

田中優子
テレビ・雑誌・書籍で幅広く活躍する料理研究家。過去には漫画「美味しんぼ」や料理番組「チューボーですよ!」(TBS系)のフードコーディネイトを担当。現在は料理研究家としての活動のかたわら、キッチンスタジオ「トリート・テーブル」を拠点に料理教室やケータリングなども行う。

2022年2月4日公開
>トッピングとれんこんいなり(左)とじゃこいなり(右)