身近な食材でつくる、 冬の薬膳鍋レシピ

1月7日は「人日(じんじつ)の節句」と言われ、無病息災を願って七草粥を食べる風習があります。この風習は実は中国で生まれたもので、平安時代頃から日本でも行われていたそうです。現代では、健康を願う以外に年末年始の暴飲暴食により負担のかかった胃腸をリセットし、お正月太りを解消する意味合いでも七草粥が食べられています。

gentenでは定番の七草粥から少し趣向を変えて。
年末年始の食べ過ぎで負担をかけた胃腸をいたわる “デトックス鍋”をご紹介します。

中医学・薬膳の専門家である田村英子さんにおすすめの食材を選んでいただき、料理研究家の和田千奈さんにレシピを考案いただきました。

健康や美容のサポート食材としても注目されている甘酒や豆乳をベースに、疲れが残る身体にやさしく染みわたる鍋を作ってみませんか?



まろやかなやさしい味わい「甘酒豆乳鍋」

甘酒と豆乳で作るスープの中には冬の滋味あふれる食材がいっぱい。しゃきしゃきとした食感が楽しく、食べ応えも十分。ほのかな甘みで、素材の旨みとコクを感じる、ほっとするおいしさです。

■おうち薬膳のポイント
せりや大根

「せりや大根は七草粥にも入っているデトックス食材の代表格です。薬膳では五味のうち『苦味』が、体にこもった熱や老廃物を尿や便によって排出してくれると考えています。
また苦い食材の多くは冷やす性質があるため、生姜などの辛味の食材や甘酒・味噌など発酵食品など温める性質の食材と合わせて使うことにより体を冷やしすぎないようにします」(田村さん)


「鯛は『めでたい』にかけてお正月の縁起物とされていていますが、実はタンパク質が豊富で脂肪分が少ないことから肥満予防に良いとされている魚です。デトックスやダイエットの時に気を付けたいのが、『瀉』(余分な物を取り除く)の食材だけを取り続けて段々と疲れてげっそりしてきてしまうことです。鯛のような良質なタンパク質を摂って新陳代謝を上げていくことがポイントです」(田村さん)

きのこ類
「きのこ類は『化痰(かたん)』作用と言って体に余分な老廃物=痰がたまりドロドロの状態になったのを溶かし出してくれます。栄養学的にもコレステロールの吸収を抑えてくれる効果を期待できますのでお正月に太ったという方は普段から積極的に採ってくださいね」(田村さん)

甘酒、味噌
「甘酒や味噌などの発酵食品は消化吸収を担う『脾』を整えてくれます。脾に負担がかかった状態では味覚も正常ではなくなるので、余計に濃い味のものを好んで摂る傾向があります。味覚を一旦リセットする意味でも発酵食品を摂って胃腸を整えることをおすすめします。陰陽のバランスがとてもよく取れたレシピですので是非作ってみてくださいね」(田村さん)


【材料】2人分
鯛切り身 2切(約200g)
※鱈など、他の白身魚でも可。あっさりとした旬の魚がおすすめです。
塩 ひとつまみ
しょうが 1片
お好みのきのこ あわせて約1袋半(約150g)
※今回は生しいたけ、しめじ、えのきを使用しています
大根 12cm(約300g)
せり 1袋
昆布 5cm角1枚

<A(スープ)>
米麹甘酒(ストレートタイプ) 200ml
無調整豆乳 400ml
米味噌 大さじ2

<〆の具材>
玄米ご飯(なければ白飯) 適量
ゆずの皮 適量
七味 適量

■食材を選ぶ際のポイント
甘酒は米麹を原料にしたストレートタイプを使用

「甘酒には、酒粕を原料にしたものと米麹を原料にしたものの2種類があります。今回はデトックス作用を期待できる米麹を原料にした「米麹甘酒」を選んでいます。また甘酒にはストレートでいただけるタイプと、希釈していただく濃縮タイプがあり、今回はストレートタイプを選びました。同じストレートタイプでもメーカーによってさらりとしたタイプや、濃厚さのある甘酒から様々ですが、お好みで選んでも良いと思います」(和田さん)

甘酒の旨みを引き立てる豆乳は無調整タイプがおすすめ
「甘酒を加えたお鍋というと“甘い鍋”をイメージしますが、豆乳を加えたり、しょうがを効かせてピリッとさせたりすることでコクがあるのにすっきりとした味に仕上がります。また、甘酒と豆乳の比率を変えると違った味わいになるのでぜひ試してみてください。

豆乳が苦手で調整豆乳を選ばれる方もいらっしゃるかもしれませんが、甘酒を加えることで大豆の青臭さも感じにくくなります。甘酒で優しい甘みが加わるので、調整豆乳ではなく無調整を選ぶことをおすすめします。」(和田さん)


【作り方】


1. 鯛は食べやすい大きさに切り、塩を振って10分ほどおきます。出てきた水分をキッチンペーパーなどで取り除きます(臭み消しになります)。


2.きのこは食べやすい大きさにカットします。生しいたけを使う場合は傘と軸に分けて、軸は細かく刻み、残さず使います。


3. せりは食べやすい長さに切ります。今回は、長く白い根っこが特徴の「三関せり」を使用しています。「三関せり」は根ごと美味しくいただけ、根を使うことで香りも楽しめます。
しょうがは千切りに。大根は皮を剥いてピーラーかスライサーで薄く削ります。大根は薄く削ることで火の通りが早く、鍋つゆとの絡みがとても良くなります。

※三関せりを根ごと使う場合は、よく洗ってください。
※普通のせりでも構いません。


4.鍋に昆布、A(スープ)、鯛ときのこ、しょうがを入れて中火で煮ます。この時、Aの米味噌は全部を入れずに半分だけ加えます。米味噌は豆乳を少し加えると溶けやすくなります。
鍋の表面がふつふつとしてきたら弱火にしてさらに4〜5分煮ます。煮立たせないように注意しましょう。


5.大根を加えて煮て、柔らかくなったら残りの米味噌を入れます。最後にせりを加えてさっと火を通せば完成です。




〆は玄米を加えて
ヘルシーな雑炊がおすすめ

〆につくるのは甘酒豆乳や味噌との相性の良い玄米を使った雑炊。鍋に残った具材をすくい、炊いたご飯を加えてひと煮たちさせます。スープにコクがあるので卵などを加えなくても十分においしくいただけます。お好みでゆずの皮や七味をのせて、アクセントに。
※玄米がなければ、白米でもおいしく作れます。

「玄米はコレステロールの吸収を抑え排泄を促す効果があるため、コレステロール値や血糖値が気になる方は、普段から白米を玄米に置き換えても良いでしょう。またゆずの皮や七味に含まれるみかんの皮は『食積』を取り除き、消化を助けてくれる食材です。胃腸に負担がかかることで胃が痛くなったり吐き気がしたりする時には、薬味として摂ることをおすすめします」(田村さん)

今回使った食材は手軽に手に入るものばかりです。年末年始だけでなく、いつもより食べ過ぎたり、飲み過ぎたりしたなと感じた日にも。
自分や家族をいたわる食事で日々を健やかに。

株式会社ワンボックス 代表 料理研究家 和田千奈

雑誌、ウェブ、書籍、企業販促用のメニューやレシピの開発、フードスタイリング、デモンストレーションを含む料理教室講師などを幅広く手掛ける。
著書に『毎日 みそ汁 からだ改善レシピ』『4つのスパイスだけで作れるカレーなレシピ』『スープジャーで楽ウマお弁当』 (以上、DIA Collection)など。
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田村英子

中医学・薬膳の専門家。漢方薬剤師、国際中医薬膳師の資格を保有し、富士堂で漢方相談を行うと共にフリーランスとして漢方・薬膳セミナー・執筆などを行う。
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2022年1月7日公開