一緒にいられるのは世話をやいてこそ

はやいもので今年も残すところわずかとなりました。年末には大掃除をする方も多いと思いますが、毎日、共に過ごすバッグや小物のコンディションの見直しをしてみませんか。
「今年もお疲れさまでした」。
そんな想いでしっかりと働いてくれた道具たちも
修理やお手入れをすることで、お気に入りをより長く愛用することにつながります。



スナップのゆるみや音で
修理のタイミングを感じとる

日々の通勤や休日のお出掛け、ご近所での買い物や散策。お気に入りはいつも寄り添う離れがたい相棒のようなもの。だからこそ、修理のタイミングの見極めが難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。上質な素材を使い、手しごとで仕立てたgentenのバッグや小物は丈夫で長持ちしますが、使用頻度によって修理が必要になることもあります。

もっとも多いお修理は糸ほつれです。小物だとスナップ交換のご依頼が一番多いですね」(修理工房スタッフ)

gentenでは、東京・市ヶ谷の店舗に併設している修理工房で修理を承っていて、ご依頼いただいたバッグや小物は一定期間お預かりして、順番にお直ししています。

たとえばお財布。革のエイジングによって艶があがり、さらに愛着がわいてきたけれど、スナップの調子が良くないと思うことはありませんか。
開け閉めの時にゆるいと感じたり、音が以前よりも鈍くなったという変化を感じた時は修理のタイミングかもしれません。


スナップは凸と凹の形状のパーツを水平に合わせることで締まります。お財布であれば、中身がたくさん入っていて表面が膨らんだりカタチが歪んだりすると、凸と凹を水平に合わせることが難しくなり、スナップに余分な負荷がかかって故障につながります。

「お財布でしたら、スナップが締まりづらくなるほどパンパンに入れないように気をつけるだけでも、随分と違ってきます」

「革小物は、毎日お持ちになって生活の一部としてお使いになられるので、お修理に出すタイミングが遅くなってしまう方も多いようです。違和感のあるまま使い続けるとお修理の範囲が広がってしまうので、ぜひ気になった時点でお持ちいただければと思います」(修理工房スタッフ)


スナップ交換の場合、修理工房では、「くいきり」という道具でスナップをつまんで端を持ち上げてから、中心部分を切って革の両面から外します。


下の凹のスナップを外したところです。上の凸のスナップのように裏側が見えないつくりの場合は、周囲を縫い付けているミシン目をほどいてスナップを取り外します。もちろん、ほどいた部分の縫い目は新しいスナップを付けてから縫い直します。

「ミシン目をほどく場合は、できるだけ数センチだけで済むように場所を考慮して丁寧に作業しています。スナップを付け直したあとは、針穴をきれいに合わせてから、ほどいていないミシン目の上から重ねて縫い直します」(修理工房スタッフ)




手で触れる機会の多い
持ち手の縫い目をチェック

バッグのコンディションを見るときは、持ち手のステッチや付け根を見てみましょう。バッグを長年使っていると、手で触れることが多い持ち手、特に裏側のステッチがスレによりほころびてしまうことがあります。

上糸と下糸は、異なる太さ(番手)の糸を使用しています。下糸を細番手にすることで美しい縫い目になります。

gentenで使用しているミシン糸は、大手製糸会社と共同で開発したgentenオリジナルのもの。革の風合いとの調和を大切にして、ポリエステル素材を芯にして強度を保ちながら、外側には綿素材を使用しています。仕上がったバッグにおだやかなむくもりが宿るのは、天然素材にこだわっているからこそです。

また、gentenで使用している牛革は、昔ながらの製法で鞣したバケッタレザーです。革の内部にたっぷりとオイルを含んだ上質な革だからこそ適度な弾力を持っています。そのため、新品の時は革の表面から少し糸が盛り上がって見えますが、使い始めると糸が締まるとともに革に馴染んで表面がなだらかになってゆきます。

このようなつくりを少し知っておくだけでも、よりバッグや革小物たちの変化に気づきやすくなるかもしれません。


新品(左)と長年愛用されたバッグの持ち手(右)を並べてみました。糸が摩耗して切れてしまっているのがわかります。

右の状態のまま使い続けると、糸がすべて取れてしまった後、積層している革と革が剥がれてしまうことにもなりかねません。剝がれてしまうと修理が大掛かりなものになり、お手元を離れる期間も長くなってしまいます。だからこそ、持ち手の糸が切れそうになっていることに気付いたら、早めの修理をおすすめします。

「糸ほつれは、最初は小さくても、時間とともに大きくなっていきますから、時々持ち手の内側も見てあげてくださいね」(修理工房スタッフ)

道具も人間の身体と同じ。不調があれば早めに対処するほど修理は大掛かりなものでなくなり、それだけ費用も軽くすみます。


手しごとで仕立てたものは、手で触れ、耳を澄まして“声”を聞き、必要であれば修理やお手入れをすることで道具を超えた存在になってゆきます。まとまった時間がとれる年末年始に、ぜひ愛用のバッグや小物と向き合ってみてはいかがでしょうか。

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2021年12月17日公開


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