からだが喜ぶ食事を。おうちでできる薬膳レシピ

季節の変わり目はからだの不調が出やすいとき。また、日々の忙しさから疲れやストレスもたまりがちです。本来の自分に、そして健やかさを取り戻すために“食べてととのえる”ことに着目した薬膳。薬膳というと特別な食材を使うイメージですが、普段手にする食材を正しく選ぶことでも実践できます。

季節ごとの旬の恵みを口にすることで、その時々の体調に必要な栄養が摂れます。旬の食材のもつ力を取り入れ、日々を健康に過ごしましょう。



乾燥する冬の季節は
腸を潤す食材を

寒さや空気の乾燥で免疫力が低下して、体にトラブルが起きやすくなる今の季節。冬の時期に摂りたい食材について、中医学・薬膳の専門家である田村英子さんにお話を伺いました。

「薬膳の考え方では、私たちも自然界の一部と考えます。冬の空気が乾燥している季節には私たちの体も内側から乾燥しやすくなり、皮膚が乾燥してかゆくなったり、のど粘膜の乾燥から風邪を引きやすくなってしまう人が目立ちます。
また大腸が乾燥することで便秘の症状に悩む人もいます。今回は腸を潤し、便通を良くする食材を選びました」(田村さん)

田村さんに選んでいただいた食材を元に、料理研究家の田中優子さんにレシピを作成いただきました。食材の滋味あふれる「鮭ときのこの炊き込みごはん」と「肉巻きレンコンのアーモンド揚げ」の2品をご紹介します。




鮭ときのこの炊き込みごはん

素材の旨みを生かしたやさしい味わいに、薬味がアクセントとなって箸が進む一品。きのこが入っているので、食べ応えがありながら、糖質やカロリーを抑えることができます。

■おうち薬膳のポイント
「9月から11月にかけて数年間回遊した鮭が日本の母川に戻ってきます。鮭は赤い色をしていても実は白身の魚。薬膳では、白身魚は気や血を養い疲労回復や胃腸の働きを助けることで消化・吸収力を高めてくれると考えられています。

また、鮭と相性のいいきのこ類ですが、食物繊維が豊富で便通を良くします。きのこ類には『托透疹(たくとうしん)』といい、肌をきれいにしてくれるといううれしい効果も期待できます。
鮭もきのこ類もビタミンDが豊富で免疫力を高め、風邪の予防効果も期待できるので、冬の季節には積極的に摂りたい食材ですね」(田村さん)


【材料】(3~4人分)
生鮭 2切
塩 少々(小さじ1弱程度)
レモン 1切
米 2合
水 約400ml

<A(味付け)>
塩 小さじ1/2
しょう油 大さじ1
酒 大さじ1
みりん 大さじ1

<きのこ類>
しめじ 100g
エリンギ 100g
しいたけ 100g

<B(仕上げの薬味)>
針しょうが 1/4個程度
万能ネギ 少々
白ごま 少々


【作り方】


1. 生鮭は両面に塩を振り、15分ほど常温で置いた後、キッチンペーパーなどで水気を拭き取る。両面に塩を振ることでうまみが引き立つ。


2. 熱した焼き網にレモンを塗ったあと、皮目がかりかりになるまで、生鮭の表面をあぶる。

「網にレモンを塗ることでたんぱく質が硬化するのをやわらげ、身のくっつきを防止します。生鮭は中まで火を通す必要はなく、表面に焼き目がつけばOK。焼き網ではなく、ご家庭の魚焼きグリルで焼いても大丈夫です」(田中さん)


3.炊飯器に米とAの調味料を入れた後、炊飯器の2合のメモリまで水を入れる。軽く混ぜ合わせたあと、食べやすい大きさに切ったきのこ類を入れる。最後にあぶった焼き鮭を切らずにそのまま入れる。炊き込みモード(なければ通常の炊飯モード)で炊飯する。


4. 炊き上がったら、焼き鮭をほぐしながら、全体を混ぜ合わせて器に盛る。Bの薬味を載せて、完成。




肉巻きレンコンのアーモンド揚げ

レンコンのシャキシャキとした食感とアーモンドのパリっとした食感が組み合わさり、新食感が楽しめます。レンコンの薄さが絶妙で、お肉の旨みをしっかりと感じる味わい。冷めてもおいしいのでお弁当にも。

■おうち薬膳のポイント
「薬膳で乾燥する季節に欠かせないのがれんこん・大根・長芋・白ごま・豚肉などの白い色の食材。白い食材は『肺』(呼吸器系統)を潤して風邪などの外邪を予防できるものが多いのが特徴です。また、肺と表裏の関係にある大腸にも潤いを与えてくれます。

特に穴の多いれんこんは形が気管支に似ていることから呼吸器を潤して空咳などへの効果を期待できます。食物繊維も豊富なので、腸内をきれいにしてくれるのもうれしいかぎりです。

豚肉には気血を養うことで疲労回復に役立つほか、体を潤す効果があり、乾燥肌や空咳、便秘の改善などに役立ちます。
衣に使用したアーモンドは、良質なオイルを含み、腸管を潤し便通を良くしてくれます。ナッツ類やごまは乾燥する季節におやつなどで常食するのもおすすめです」(田村さん)


【材料】(2人分)
れんこん 5mm幅で6枚
豚肉(しゃぶしゃぶ用) 6枚
塩 少々
こしょう 少々

<衣>
小麦粉 適量
卵 1個
アーモンドスライス 70g
揚げ油 適量

<付け合わせ>
クレソン 適量
レモン 1/6個程度


【作り方】


1. レンコンは皮をむかずにスポンジなどで汚れを落としたあと、5mm幅の輪切りにする。

「スポンジの硬い面を使って皮をこすると簡単に汚れが落ちます。皮に栄養がたっぷり含まれているので、皮ごと使います。れんこんは厚く切ると味がぼやけるので5㎜程度がベスト」(田中さん)


2. 塩・こしょうで下味をつけた豚肉でレンコンを巻く

「肉の下味用に振る塩・こしょうは片面のみでOK。下味がついたほうを内側にして、れんこんを巻いてください」(田中さん)


3. 小麦粉(薄め)、溶き卵、アーモンドスライスの順に衣をつけていく

「小麦粉は薄くつける程度にして、余分についた小麦粉は落としてください。小麦粉の工程をすべて終わらせてから、手を洗い、次の工程にうつると、手にダマができず効率的です。次の工程では、右手で溶き卵をつけて、左手でアーモンドをつけるときれいに衣がつきます」(田中さん)


4. 170度の油でアーモンドスライスがきつね色になるまで揚げる。

「アーモンドスライスは両面にしっかりつけてください。揚げている途中でアーモンドが少しはがれる場合がありますが、そちらはすくって、おつまみに」(田中さん)


5.器に盛り、お好みでクレソン、レモンを添えて完成。食べやすくカットしても、そのままでも。

冬の味覚を使った薬膳レシピは、手軽な食材で簡単においしくつくることができます。
乾燥の季節、肌など外側のことに目がいきがちですが、実は体の内側も潤す必要があります。
食事で体の内側から整え、寒い冬を健やかに乗り切りましょう。


田中優子

テレビ・雑誌・書籍で幅広く活躍する料理研究家。過去には漫画「美味しんぼ」や料理番組「チューボーですよ!」(TBS系)のフードコーディネイトを担当。現在は料理研究家としての活動のかたわら、キッチンスタジオ「トリート・テーブル」を拠点に料理教室やケータリングなども行う。

田村英子


中医学・薬膳の専門家。漢方薬剤師、国際中医薬膳師の資格を保有し、富士堂で漢方相談を行うと共にフリーランスとして漢方・薬膳セミナー・執筆などを行う。
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2021年11月26日公開