時々お修理しながら。
使ってこそのバッグたち

暖かさとともに少し湿った空気を感じはじめると、衣替えの季節です。
「衣替え」は日本特有のもので、6月と10月に行われるのがならわしになっています。

梅雨に入り、雨降りの日が多くなる時期は、衣類だけでなくバッグのお手入れをしていただくのにも良いタイミングです。
本格的な夏を迎えるその前に、眠っているバッグや出番を待つ小物たちを見直してみませんか。

トップの写真はgentenのバッグを愛用してくださる方々にご協力をいただいて集められたプロダクトたち。

お修理を重ねて、十年以上の時を経た現在もなお美しく、個性的に。
自信を持って使い続ける、そんな想いにあふれています。


愛用品:ゴートヌメ ミニボストンバッグ(2007年発売の商品)
愛用歴:14年

時が経つほど愛おしい、“偏愛”バッグたち~

「やっとシワができてきました。」
嬉しそうに話す持ち主さんがこのバッグを使い始めたのは14年前のこと。使いたてのころはゴートレザー(山羊革)の特徴でもあるハリとコシがあり、形も崩れにくいのですが、時を重ねるにつれてその硬さがほぐれ、柔らかで“ぐずっ”とした表情に。

また、ゴートレザーは使い込むほどにシワや艶が生まれ、深みのある落ち着いた雰囲気へと変化してゆきます。特にこの持ち主さんの場合は、表面に油を差すなどのお手入れを定期的に行っていることから、艶がいきいきとしていて可愛らしさが増しているよう。

「人間のお肌で例えるとアンチエイジングに熱心な女性は多いですが、時(歳)を重ねることは決して悪いことではなく、むしろ美しく楽しいことなんだと、このコに教えられます」

愛用品:ニュージーランドディア ボストンバッグ(2002年発売の商品)
愛用歴:18年5カ月

gentenの革バッグは、その革の持つ個性を最大限に引き出すために過度に芯材を用いずにデザインを手がけています。こちらのボストンバッグはニュージーランド産の鹿革でおつくりしたもので、柔らかくしなやかで、軽いのが特徴です。

革のバッグはその方の使い癖によって形が変わることがありますが、こちらのボストンバッグの持ち主はショルダーバッグのように持ち歩くことが多いそうで、くるんと反ったハンドルに染み出る「味」、まるで大きな耳の犬を思わせるくたり感も、とても愛嬌があります。


「もともとはスクエアでシンプルなフォルムだったんですけど、荷物が入っていないときはくたっとしていて、それがまた可愛らしくて。若さに満ちあふれてエッジの効いていた頃よりも、多くの知恵や経験から角が取れて円熟味を帯びた大人になれたような。ヘビーに使ってきたので傷もそこかしこにできていますが、それもいいなって思っています」

お修理の様子。持ち手部分が切れてしまったときは、状況によって交換するか縫い直してお修理するかを決めます。



愛用品:アマーノ トートバッグ(2007年発売の商品)
愛用歴:13年4カ月

ともに歳を重ねて、自分らしく、個性を生かして

こちらの「アマーノ」は使い始めて15年以上を経ているにもかかわらず、お修理のみで一度もお手入れをしたことがないそう。

「このバッグは一緒に暮らしている感覚に近いんです。使う、というよりも一緒にいる、っていう表現が合っているかもしれません。自分は勝手に生きているから、お前も勝手に生きろ、みたいな。自由気ままな付き合いで、猫のような存在なんです(笑)」

15年ほぼ毎日使い続けてきたというバッグは、急な土砂降りや大雨も経験し、大雪の日には雪の上にざくっと置いたりと、過酷といえば過酷かもしれませんが、そんなパートナーについていくたくましさはバッグの表情にもあらわれてるかのようです。

お修理の様子。ステッチが擦り切れてなくなってしまったり、持ち手の革と革が剥離してしまったりなどのお修理もご依頼の多いメニューの一つ

愛用品:ユーフラテス トートバッグ(2010年発売の商品)
愛用歴:10年7カ月

女性の手だと太くて持ちづらいであろうユーフラテスのトートバッグは、そのハンドル部分が特徴的で、持ち主さん(男性)がこよなく愛する偏愛ポイントでもあります。

「バッグを持つというよりも革を握っている感じが好きなんです。しっかりと握るというよりも、あえていびつに持ち歩くとかっこいいんですよね。」

握りしめるとぎゅっぎゅっと音がするほどの「革感」、手なじみが良く、フィット感も格別です。また、一枚の革をぐるんと巻いたようなボディの「景色」と、タコツボを思わせるフォルムもお気に入りだそう。


ステッチ部分は頑丈に縫製していますが、革の伸びと共に糸が弱まったりすることもあります。持ち主さんはそれすらも「景色」として偏愛していますが、より長く付き合いたいからと定期的にお修理を利用されています。


こちらは、長くご愛用いただいている革小物たち。
なんという味わい深い表情、光沢感でしょうか。
特にお財布などは毎日手で触れていただくものなので、より一層味が出るのも愉しみ方のひとつ。お修理をしながら、長くお使いいただけます。




眠っているバッグや出番を待つ小物たち。
いま一度見直して、使ってみませんか

汚れるのが怖いから、傷がついたらもったいないからと、クローゼットに眠らせているバッグや小物たちを見直してみると、使い始めたころと違った表情になっているかもしれません。

gentenが大切にしているのは、愛着のある暮らしへの想い。

使わずにきれいをキープするのではなく、たくさん使っていただくことこそが贅沢で素敵なことなのです。

自然から与えられるものに配慮して、デザインを考え、ものづくりをする。
そして、長く使って、こわれたら直す。

十年先も変わらず愛用していただけるように。

詳しいお修理のメニューやご依頼の流れなど「修理メニューのご案内」はこちら

2021年6月4日公開