むだなし料理
~旬のりんごを丸ごと味わう、ティータイム~

料理をすると必ず余ってしまう野菜や果物の皮やへた、わたなど。何だかもったいないなと思いながらも、そのまま捨ててしまうことがほとんどです。

実はこの部分にも栄養がたっぷり含まれていて、旨味や香りを存分に味わうことができます。身近な野菜や果物の使い方をちょっと変えるだけで、おいしくて、体にも環境にもやさしい「むだなし料理」に生まれ変わります。
りんごは皮ごとそのまま食べてもおいしいですが、今回はひと工夫。旬のりんごをまるごと使ったむだなし料理を料理研究家の野口英世さんに教わりました。


りんごの甘い風味はそのままに
やさしい味わいのアップルシナモンティー

1年中手に入るりんごですが、旬を迎える秋から冬は香りがより濃くなり、甘みが増してぐんとおいしくなります。
「りんごを食べることが多い今の時期。皮をむいて余ったときに、とっておきの活用法を教えます。」と野口さん。


ふじやジョナゴールド、紅玉など、りんごはどの品種を使っても構いません。

■アップルシナモンティー
[材料] 3〜4人分
りんごの皮 1個分
シナモンスティック 2本
紅茶の葉 ティースプーン3杯分(約9g)
熱湯 480ml
※シナモンスティックではなくパウダーを使う場合は、味を見ながらお好みで調整してください。

[作り方]調理時間の目安:5分


①りんごはよく水洗いしてから皮をむく。
「りんごの皮や皮に近い部分には、食物繊維やビタミンC、ポリフェノールなどの栄養が詰まっています。りんごがつやつやしているのは天然のオイルで、油あがりと言われる現象です。りんごがおいしく熟した目安となります。」(野口さん)


② ティーポットにりんごの皮、シナモンスティック、紅茶の茶葉を入れる。


③ 沸騰させたお湯を注いで蓋をする。3~4分置いてからカップに注げば完成。
事前にポットやティーカップを温めておくと、よりおいしくいただけます。

香料を使っていないアップルティーは、ほっとするやさしい味わい。ほんのりとりんごの甘さを感じます。ポットにお湯を注いだ瞬間、ふんわりと広がるりんごとシナモンの香りに包まれて、幸せな気持ちに。



表面さっくり、中はしっとり
素朴な味わいのアップルケーキ

「りんごって人からいただいたり、スーパーでつい買ってしまったり、この季節になるといつの間にか家にある果物ですよね。そのまま食べるのに飽きてきたときやりんごが余っているときに簡単に作れるケーキをご紹介します。」(野口さん)

■アップルケーキ


[材料] (4人分/直径20cmのフライパンを使用)
〇りんごソテー(フィリングとして使用)
   りんご  1個
   バター 20g
   砂糖 20g
   シナモンパウダー 少々

〇ケーキ生地
   バター 50g
   砂糖 50g
   卵 2個
   薄力粉 60g
   アーモンドパウダー 30g
   ベーキングパウダー 1g(小さじ1/4) 
※バターの有塩、無塩はどちらでもお好みで構いません。ケーキ生地に無塩を使うときは塩をほんの少し加えると味がしまります。
※砂糖はきび砂糖を使用していますが、ご自宅にある砂糖で構いません。

[作り方] 調理時間の目安:45分


①りんごは皮をむき、芯をとって、2~3㎝角の角切りにする。炒めるまでに時間をおく場合、変色を防ぐためにレモン汁(分量外)をふりかけておく。


②フライパンを中火で熱してバターを入れ、半分くらい溶けてきたらカットしたりんごを加えて炒める。


③りんごに透明感が出てきたら砂糖を振り入れ、全体にからめるように炒める。お好みでシナモンパウダーを加え、さらに炒める。


④水分がある程度飛んで、りんごがつややかになったら火を止め、りんごソテーの完成。


りんごソテーはそのままヨーグルトのトッピングにしたり、トーストにのせて食べても。市販のジャムよりもみずみずしく、りんごのシャキシャキ感が楽しめます。
「保存容器に移して冷蔵庫で保存し、2~3日で食べ切りましょう。食べるときは電子レンジで少し温めると風味が際立ちます」(野口さん)

⑤ ケーキの生地を作る。最初に薄力粉、アーモンドパウダー、ベーキングパウダーを合わせてふるっておく。


⑥ 室温に戻したバターをボウルに入れ、泡立て器でクリーム状にし、砂糖を加えて、ふわっとするまで混ぜ合わせる。


⑦ 卵を溶いて2回に分けて⑥に加え、その都度、むらがなくなるように泡立て器で混ぜる。


⑧ ⑤でふるった粉類の半分を加え、泡立て器で混ぜる。混ざったら、残りの半分を加え、ゴムベラで粉っぽさがなくなるまで混ぜ合わせる。


⑨ ④のりんごの入ったフライパンに⑧を流し入れ、なじませるように混ぜる。フライパンを数回、上下にふって生地を全体に行き渡らせる。

⑩オーブンを180度に予熱し、⑨を入れて25〜30分焼く。

⑪ 竹串をさしてみて、生地がついてこなければ焼き上がり。粗熱がとれたら、好みのサイズに切り分けて完成。
「ミントを添えたり、粉糖をふりかけたり、ホイップクリームやアイスクリームを添えてもおいしいですよ」(野口さん)

【POINT】
「りんごソテーの上に生地を流す時、あえて混ぜ込まずにタルトタタン風にしてもおいしくできます。スキレットやオーブンに入るフライパンがなければ、耐熱容器やケーキ型にりんごソテーと生地を混ぜたものを流し入れて焼いてください。」(野口さん)


「同じ生地で、りんごの代わりに柿、洋梨、プラム、プルーンなど季節の果物を使っても、また違った味わいが楽しめます。」(野口さん)

ケーキはフィナンシェのように、表面がさっくりとしていて、中はしっとり。リンゴがアクセントになり、手作りならではの穏やかな甘さです。


りんごを丸ごと使ったティータイム。環境にも、自分にもやさしく、ほっとするひとときを過ごしてみませんか? 私たちgentenは、自然からいただいた素材を使ってものづくりをしています。自然の恵みを余すことなく活用し、豊かに暮らすヒントをこれからも提案していければと思います。

次回のむだなし料理は「ベジブロス」。余ってしまう野菜の皮を使ったレシピをご紹介します。こちらもぜひご覧ください。


野口英世(料理研究家・フードスタイリスト)
料理研究家、フードスタイリストとして、テレビや雑誌、新聞、広告などで活躍中。無理や無駄のない、作り手重視の効率的なレシピとスタイリングアイデアが人気となっている。近著は「turk フライパンクックブック」「使いやすい台所道具には理由がある」(共に誠文堂新光社)など。
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2020年11月20日公開