「自然」の移ろいを映した色。
ミモザ・ベーシックの新色“ノウチャ”

赤、橙、黄、茶。
ふと、足元の落ち葉の鮮やかさに目を奪われることはありませんか。一枚の小さな葉の中に詰まった素敵なグラデーション。生活が変化した今、当たり前のことに心を動かされる機会が増えました。
外の空気に触れると、新鮮な気持ちになる。周囲に心をとめると、ときに想像もしなかった自然の色に巡り合い、はっとすることも。

ミモザ・ベーシックの自然の色がもつ魅力、奥行きのあるカーキのような生地。この色は何からできているのでしょうか。


古来より伝わる
植物染め

天然素材の色を活かして染める「植物染め」。中国やヨーロッパでは数千年も昔から、日本でも縄文時代から行われてきた伝統的な手法です。化学染料が登場するまでは、植物染めは私たちのすぐ傍にあり、暮らしを彩っていました。

化学染料が登場したのはつい160年ほど前。均一に、安く、鮮やかなものを。大量生産・大量消費の時代に合った化学染料は、急速に浸透していきました。その手軽さから現在では市場に出回る商品のほとんどが化学染料で染められています。

化学染料が“平面的な色”なのに対し、植物から抽出した色は無数の色合い、形、大きさの色素が重なりあった“奥ゆかしい色”。それは植物の育った環境によって、さまざまに表情を変えてゆきます。

gentenが選んだのは、昔ながらの植物染めのひとつ、タンニン(渋)染め。
植物染めの中でも、タンニン染めには防腐効果があり、古くから魚網や釣り糸、木材の塗装など、「色」のためではなく、人が生きる「用」のために使用されてきました。「用」のための「渋」を機能あるバッグとして形にしたのがミモザ・ベーシックです。

ゆったりとした時の流れとともに移り変わる色合い。自然の恵みをあるがまま受け入れる、おおらかさ。それは自然と共に生きていた当時の精神性に立ち返るということでもありました。




春に黄色の花弁をつける「ミモザ」と英語でチェスナットと呼ばれる「栗」。一見すると、ミモザの花弁や栗の実から染色するように思えますが、実はそれぞれの樹皮からとれるタンニンで染めています

ミモザとチェスナット。
四季の移ろいや自然のありように
心を寄せる

gentenのミモザ・ベーシックは植物染めによる「自然」の風合いを存分に味わっていただけるシリーズ。定番色の「チャ」はその名の由来ともなっている「ミモザ」と「チェスナット(栗)」で生地を染めています。新たに加わった「ノウチャ」はそこに鉄を加えて色を変化させたものです。日本では昔から「鉄釘」を植物染めの色止めとして用いており、その知恵を活かしました。


「ミモザ・ベーシック」で使われている染料の粉末。左から時計回りに鉄(硫酸鉄)、チェスナット、ミモザ。


染め上がった生地。

その年の気候、収穫した時期、産地によって、色合いは変化します。自然が育む色の“ゆらぎ”をgentenは魅力としてとらえています。
ミモザ・ベーシックの絶妙な色のさじ加減を担っているのは、京都の熟練した職人。京都・伏見の近くの染工場で清らかな地下水を使って染めています。「地下水の恩恵が美しい仕上がりにつながっている」と長年タンニン染めに携わる、渡部さんは言います。


京都・伏見を流れる清流。その地下水を使用。日本酒づくりにも使われる軟水はタンニンとも好相性。


左は新品の状態。右は真夏の2カ月間、日光に当てた状態。

ミモザ・ベーシックは使用していくうちに黄みを帯びたやわらかな色合いに変わっていきます。晴れた日が続くと気分が高揚するように色はどんどん変化し、逆に曇りや雨の日が続いたり、寒くなって外に出る機会が減ったりすると、変化は少なくなります。まるで私たちの心に寄り添うように色が変わっていくのも、植物染めならではの楽しみのひとつです。



手仕事の温もりが
込められた生地

ミモザ・ベーシックの生地は品質の高さで知られる、岡山県倉敷市児島の帆布工場で織られています。昔ながらの“シャトル織機”によって、手間をかけてじっくりと織った、高密度でハリのある生地。だから、丈夫で、水が染み込みにくく、よれにくい。大人がもつにふさわしい上質な生地です。

縫製はタイの職人の手によって行われています。ミモザ・ベーシックの表情を決める、ステッチ。よく見ると縫い目は一定ではありません。ゆらぎのある天然の色との相性を考え、手仕事の温もりを感じるステッチを施しました。ミシンの糸調子を整えながら、丁寧に縫っています。



日々の暮らしに寄り添う

新色のノウチャは全7型。日々の生活やお好みにあわせて、どの型も男女問わず、お選びいただけます。


gentenの4型。
左上から時計回りに、ミニショルダーバッグ 29,700円トートバッグ 38,500円リュック 53,900円ショルダーバッグ 34,100円。価格はすべて税込です。 


モデルの身長は152cmです。
ナチュラルにまとめる場合、クロの色味を取り入れると、全体の印象が締まります。


dan gentenの3型。
上から時計回りに、フラップ付きショルダーバッグ 42,900円トートバッグ 47,300円ショルダーバッグ 47,300円。価格はすべて税込です。 


モデルの身長は175cmです。
ハリのあるしっかりとした生地で、カジュアル過ぎない印象。軽快にご使用いただけます。


自然の色が活きたミモザ・ベーシック。その穏やかな色合いを傍に置くことで心が安らぎます。目で見て感じる心地よさを日常に。

■ミモザ・ベーシックのお手入れについて■

布×革のバッグですので、防水スプレーを使用すると雨の日も安心してお使いいただけます。本体部分はミモザと栗のタンニンで染めた生地だからこそ、革と同じように経年変化が楽しめます。

また、革は内部にたっぷりとオイルを含んだミネルバボックスなので、ふだんのお手入れは柔らかな布で乾拭きをするだけで十分です。gentenのデリケートクリームやコンディショニングクリームが使用可。お使いいただくうち、乾燥が気になるときにはご活用ください。次第に表面にオイルが現れてきて、透明感のあるエイジングが楽しめます。


《つくり手通信》
ミモザ・ベーシックのタンニン染めに携わる、渡部日吉さんより


布地に関わったのは大阪の商社に入社してからですから50年は経過しました。

タンニンの粉で生地が染まるだろうか?
20年程前になりますか……
革屋の長老との雑談中に鞣しにタンニンの粉を使うという話しとタンニン鞣しの革は時が経つと色が濃くなると云う事に興味を持ちました。

布地にタンニンを含ませたらどうなるだろう?
当時柿渋で染めるたびに、色違いが多発して悩んでいましたので草木染めをする染屋さんに頼んでみたのが始まりです。

思い通りにいかない期間が2年ほど続きました。
染める度に上手く色が出るか? 当時は心配ばかりの日々でした

なぜか(?)20年以上の継続商品になりました。
その間、織屋さん、染屋さんどちらも変わりません。同じ条件で染める事が一番です。
継続は力なり。
誰もやらない事に時間をかけて、無駄な人生を送っていますが時には良い事もあるのです。

自然のものに興味を持っているので、年間の1/3は実家のある島根松江の自然の中で過ごします。山でシイタケを栽培。蕎麦の栽培。今年は餅米を作りました。

2020年10月30日公開

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