おいしい手しごと―自家製調味料
時間がゆったりと流れる秋の夜長は、手しごとに最適なひとときです。今回は、身近な材料で簡単にできて、からだにもやさしい、手づくり調味料をご紹介しましょう。私たちの食卓ではお馴染みの、めんつゆ、ぽん酢、醤油麹も、手づくりするとおいしさは格別です。日々のごはんをちょっと特別なものにしてくれる調味料のレシピを料理家の和田千奈さんに教わりました。
これさえあれば食卓が豊かに
出汁殻までおいしい「めんつゆ」
そばやうどんのつゆとして、煮物やおひたしなどの和食からドレッシングまで、めんつゆは毎日の料理に欠かせない万能調味料です。身近な材料で作れるめんつゆは、おいしさも格別。
「めんつゆは、それさえあれば味が決まるので助かりますよね。忙しいときや疲れているときも。手作りめんつゆがあれば、時短でからだにやさしい料理ができます。余分なものを加えないから味わいも自然で、出し殻まで捨てるところなく食べ切れるところもポイントです」(和田さん)
手作りめんつゆ(濃縮タイプ)
[材料](作りやすい分量)
かつお節 30g
昆布 10cm角2枚(約10g)
しょうゆ、みりん 各200ml
酒 100ml
[作り方]
① 材料をすべて鍋に入れて火にかけ、沸騰したら弱火で5分ほど煮出し、火を止めてそのまま粗熱をとる。
② ①をざるで漉して密封容器に入れる。
ポイント
保存は冷蔵庫で約2~3週間。水を加えていないので日持ちします。麺類のつけつゆやかけつゆとして使う場合は、めんつゆと水1:1~1:2の割合で薄めてください。
漉したあとの出汁殻(かつお節、昆布)も食べられます。かつお節は青菜を和えたり、ご飯にのせたりしてもおいしい。昆布は刻んで炊き込みご飯にするのもおすすめ。
アレンジ 秋野菜の焼きびたし
なすやれんこん、きのこ類などの秋野菜は、食べやすい大きさに切ってごま油やオリーブオイルでソテーするか、オイルを絡めてグリルやトースターで焼きます。手作りめんつゆと水を1:1の割合で混ぜ、千切りにしたしょうがを加えて野菜が熱いうちに漬けます。
柑橘のさわやかな香りと酸味が
そのまま味わえる「ぽん酢」
これからの寒い季節は、ゆずや橙などの柑橘類がおいしくなって市場に出回ります。お鍋に欠かせない爽やかな味わいのぽん酢は市販品もおいしいですが、一度手作りしてみると、搾りたての果汁の鮮烈な香りと味わいに驚かされます。
「手作りぽん酢は私自身も常備していて、お鍋やステーキ、冷ややっこ、サラダなど1年中、大活躍しています。作っておいてよかった!と毎回思える調味料です」(和田さん)
手作りぽん酢
[材料] 作りやすい分量
しょうゆ 大さじ6
酢、みりん 各大さじ2
昆布(5cm角) 1枚
柑橘果汁(かぼす) 大さじ4
[作り方]
① しょうゆ、酢、みりん、昆布を鍋に入れて強火にかけ、軽く煮立たせてから火を止める。
② そのまま粗熱を取り、柑橘果汁を加えて混ぜる。
ポイント
保存期間は冷蔵庫で約1カ月。できたてよりも、少し寝かせると味がまろやかに。昆布は風味が濃くなってきたら取り出します。
今回はかぼすで作っていますが、橙、ゆず、レモン、グレープフルーツ、オレンジなど季節ごとにお好みの柑橘類で作れます。
アレンジ ぽん酢冷ややっこ
「作っておいてよかった! といつも思っているくらい重宝しています。そのままお鍋のつけタレとしてはもちろん、ステーキ、お豆腐、サラダなど、なんでもさっぱりと美味しくいただけます」と和田さん。
アレンジ ぽん酢ドレッシング
手作りぽん酢とオリーブオイルを1〜2:1の割合で混ぜるだけで万能ドレッシングに。蒸し鶏や白身魚にかけても。
自然が育む奥行きのある旨味
昔ながらの発酵調味料「醤油麹」
日本の食文化において「麹」は欠かせない存在です。特に「米麹」は、醤油や味噌、みりん、酢、日本酒など、さまざまな調味料の材料になっています。米麹と醤油を混ぜて発酵させたのが「醤油麹」。最近では、塩麹と同じくらい広く知られるようになりました。
「レシピは本当にシンプルで、米麹と醤油を混ぜるだけ。あとは麹菌が仕事をしてくれるので、まろやかで、奥行きのある味に仕上がります。お魚やお肉にのせる、野菜に合わせる、ごはんに乗せる、納豆に混ぜるなど、醤油の代わりにどんどん使ってください」(和田さん)
米麹は蒸し米を麹菌で発酵させたもので、扱いやすく保存もできる乾燥米麹がおすすめです。板状(写真左)と粒状(写真右)があり、スーパーでは豆腐や味噌などと同じコーナーにおかれています。
醤油麹
[材料]作りやすい分量
米麹(乾燥) 200g
しょうゆ 300ml
[作り方]
① 米麹は軽くほぐして、清潔な保存容器や保存袋に入れ、しょうゆを加える。
② 1日1回、醤油麹全体に空気を含ませるように清潔なスプーンなどでかき混ぜ、約1週間ほどで完成。冬場など寒いときは2週間近くかかることもあります。
ポイント
なかなか発酵しないときは、容器ごと低温調理器に入れたり、約60度のお湯を張ったボウルにつけて温めたりすると発酵が進みやすくなります。米麹の粒がやわらかくなり、とろりとしてきたら食べ頃です。保存期間は冷蔵庫で約3カ月が目安です。
アレンジ 鮭の醤油麹焼き
生鮭1切れに醤油麹大さじ1/2を塗ってグリルで焼きます。醤油麹の旨味が濃いので減塩にもなっていると思います。ぶり、さば、白身魚など他の魚でもおいしい。
アレンジ アボカドの醤油麹和え
アボカド1個は一口大に切り、手作り醤油麹小さじ1と1/2〜小さじ2を加えて和える。お好みでわさびを添えてもおいしい。
調味料は味わいの基本となるもの。特に今回ご紹介したものは日々の食卓で活躍してくれる和食の調味料です。毎日の料理を自分好みに調えてみてはいかがでしょうか。
和田千奈(料理研究家)
食べることが大好きな両親のもとで、料理のコツや楽しさを学びながら育つ。大学卒業後は航空会社の客室乗務員として勤務。多忙な生活の中で食の大切さを改めて実感し、食を伝える仕事をしたいと決心する。退職後は料理教室アシスタントを経て独立。現在は、雑誌、ウェブ、書籍、企業販促用のメニューやレシピの開発、フードスタイリング、デモンストレーションを含む料理教室講師などを幅広く手掛ける。
著書に『時短!簡単!からだが喜ぶ魚の水煮缶レシピ』、『毎日 みそ汁 からだ改善レシピ』、『4つのスパイスだけで作れるカレーなレシピ』(以上、DIA Collection)など。
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2020年10月23日公開