長い年月をかけて培った、
手しごとの美しき感覚
gentenが大切にしているのは、手しごととそこから生まれる風情です。
お客様がプロダクトに触れたとき、手と肌、五感で伝わるその奥深い温もりを感じてもらえるように。
その温もりはどこから伝わってくるのでしょうか。
gentenでは、ひとつの商品が出来上がるまで、世界中の様々な生産に関わる人々の「より質の高いものを」という熱い思いを込めながら、多くの細かい手作業を経て最終的なデザインを仕上げています。
ひとつひとつは小さな思いでも、それが集結することで、お客様の手元に届いたときに、愛着をうむ温もりが伝わってくるものだと考えます。
今回は、その一端を担う、海外自社工場のストーリー。gentenの素朴な革を巧みに扱う、ものづくりの風景にクローズアップしてみましょう。
手づくり大国、タイの
手しごとへの情熱
アイテムによって多少の違いはありますが、gentenのプロダクトができるまでの工程をご紹介します。まずは日本の企画チームが考え、創りだしたデザインを図面にしてタイのファクトリーに渡されます。同時にミネルヴァを中心としたイタリアの革も工場に届けられ、いざ生産がスタートします。
タイの自社工場は1989年に弊社がクイーポタイランドを設立し、作られたもので、昨年で30周年を迎えました。なぜ、タイに自社工場を作ったのか。その理由は様々ありますが、大きなきっかけは「手づくり大国、タイ」と呼ばれるように、gentenが大切にしている手しごとの良さが長い歴史の中で、伝統的に根付いている国だから。モン族やカレン族といった山岳民族の精緻な刺繍や銀細工、竹やつる草など天然素材を使った細やかなかご細工。タイでは、手しごとでつくり出される伝統工芸が今でも大切に受け継がれています。
もうひとつの大きな理由は「途上国の貧困の社会から雇用を生み出すことで、多くの人々の生活を支える役割を担いたかった」からです。
タイ工場の優れている点は、時間と情熱をかけた丁寧な手しごとによるものづくりです。タイの勤勉でまじめな国民性もあり、ひとつの作業にじっくりと時間をかけることを惜しみません。
コバ磨き、焼き捻、かがり、編みの革細工など……。バッグや財布など革小物を作る上で行う細かな作業ですが、これらをレディースの商品で、こんなにたくさん施すことができる工場は少ないのが実状です。
このタイ工場では、正直時間と手間がかかるとも言えるこれらの作業を、情熱を持って取り組みます。
例えば、コバ磨きという作業でいえば、革を磨く作業を日本国内なら機械で一気に済ませるところを、手作業ですごく長い時間かけて磨きます。日本人の企画チームが現地に出向いた時には、そのていねいさに驚いたほどです。
時間をかけて丁寧に手で作って生まれるものの良さを、脈々と続く歴史の中で知っているのです。
創業30年のタイ工場には、これまでのアーカイブが集結している。
タイのお昼ご飯の時間。カメラを向けると、恥ずかしがりながらも楽しそうに集まってくれました。
gentenの新たな試みを広げる
カンボジア工場
ここはカンボジア工場で新規商品生産を行うたびに、タイ工場より有能な技術指導員が訪問し、技術を伝授してきました。短期間ですが、能力や技術は目覚ましく成長しています。
カンボジア工場の雰囲気は明るく、自然体。
カンボジアの国民性は、真面目で笑顔を絶やさず穏やか。政治的な背景もあり教育を受ける環境がない方も多いのですが、その純朴さが丁寧な手しごとを生み出しています。
工場では技術だけでなく教育的なことも含めて教えていきますが、学べるという事に貪欲です。タイ工場からの指導員が来て教えてもらうと、どんどん吸収していきます。技術が向上しているのはもちろん、成長することに喜びを感じてもいるそうです。こうした喜びがお客様がgentenのバッグを手にとった時に感じるぬくもりにつながっているのかもしれませんね。
アマーノ トートバッグを制作中。手作業で縫うための穴を空けてゆきます。
太番手の麻糸を手縫いで補強する工程。カットワークシリーズのアクセントにもなっていますね。
機械の不具合などは専任の整備係が修理。
カットワークの型抜きはデザインが細かいため念入りにチェック。
仕上がりはひとつずつ目で確認します。
タイ・カンボジア工場で
人々が働く環境
タイ工場、カンボジア工場ともに「現地の人々の生活を支える」ためには労働環境の整備も大切と考えています。日本では当たり前ですが、現地では珍しい昇給制度や残業代手当、食事の支給、バスでの送迎、無料の寮など安心して働いてもらえるような環境づくりにも努めています。
タイ工場のワーカーに聞いた
ここで働く幸せ
勤続年数30年
・gentenの工場で働いていて楽しかったこと
日本から届く新しいデザインのサンプルを作れること。毎回たくさんのサンプル指示が届くのでいろいろなデザインに挑戦できて楽しいです。
・gentenの工場で働いていて良かったこと
革の専門学校で学んだことを活かして自分のスキルを更にアップできていること。毎日新たなことに挑戦しなければならないので、飽きることなく楽しいです。数年ごとにある研修で日本を訪れたとき、きれいなショップに自分が携わったバッグが並んでいるのを見て感動しました。
ブンピアンさん/ストックルーム担当
勤続7年
・gentenの工場で働いていて楽しかったこと
生産を始める前に材料を各班に配る準備がきちんとできた時に楽しいと感じます。金具などを整理整頓するのも楽しいです。
・gentenの工場で働いていて良かったこと
この仕事はプレッシャーがないところ。働き続けられる理由はワーカー達の仲が良いこと、毎年昇給していくのでやりがいがあることです。
スティワットさん/バッグのグループリーダー
勤続11年
・gentenの工場で働いていて楽しかったこと
自分が担当した商品(サンプル)の作り方を班のリーダー達にどう伝えるかを考えながら、みんなとコミュニケーションをとりながら進めるのが楽しいです。
・gentenの工場で働いていて良かったこと
カンボジア工場では教える立場なので、自分が指示を出していくので、全工程を理解して自分で決断することを学び、自信がついたことです。
ワッチャリーさん/小物のグループリーダー
勤続30年
・gentenの工場で働いていて楽しかったこと
毎日勉強して図面が理解できるようになったのがうれしかったです。新しいサンプルを作るときには自分のアイデアを試せるのが楽しい。研修で日本を訪れたとき、日本のお客様がお財布を手にとっているところを見られてうれしかった。
・gentenの工場で働いていて良かったこと
革製品を作るのが大好きなので、仕事にできて幸せです。ワーカー達や上司とも仲良しです。長く働くためには人間関係がとても大切だと思います。
ユラナンさん/裁断のリーダー
勤続10年
・gentenの工場で働いていて楽しかったこと
毎回新しいデザインが来るので、毎回新しいものを生産できるのが楽しいです。
・gentenの工場で働いていて良かったこと
以前の職場よりもストレスがあまりないので体調も良くなり、生活も良くなりました。しっかりと仕事に合った報酬がもらえるので、働き続けられます。
gentenと共に循環する
愛情としあわせ
わたしたちgentenはお互いの特性を生かし、共に歩んできました。gentenの海外工場は、その社会に雇用を生み出し、人々の生活を支える。教育制度がなかなか功を奏しないという環境の中、教育や技術などを伝え、労働条件を整えて、働き続けられる環境を提供してきました。では、雇用を生み、生活を支えた先には何があるのでしょうか。それはgentenに関わる人々の“しあわせ”を生み出すことです。
人と人が互いに協力し合える環境で役割を担い、自分以外の人のために行動するとき、しあわせを感じることができます。ここ海外工場では、機械の代わりのような仕事ではなく、自分のアイデアや挑戦を実現できる環境を通して、しあわせを生み出すことができるのではないかと考えています。
受け継いだ手しごとの技術を生かして活躍するタイの人々。学び成長し、手しごとを通して喜びをかたちにするカンボジアの人々。こうしてgentenのバッグに込めた愛情が循環し、やがてお客様に届くことを願っています。そして愛着をもって使い続けていただけるよう、これからも手しごとにこだわり、手から手へ、人と人とを結ぶ心をのせたものづくりを目指します。
※タイ、カンボジアの取材時期はすべて2019年12月中旬頃です。
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