旬をいただく大人のお弁当 仲秋

暑さも少しずつ和らぎ、過ごしやすい季節になってきました。今月は、月が美しい季節にちなんで、料理家の和田千奈さんに、秋の味覚たっぷりのお月見弁当を作っていただきました。お酒にも合う料理ばかりなので、夜空を見上げながら月見酒、と洒落込むのもいいかもしれません。

豊かな収穫への感謝を込めて
秋の味覚たっぷりのお月見弁当

空気が澄んで夜空が一際きれいに見える秋は、お月見にぴったりの季節です。日本には昔から、欠けのない満月を豊穣の象徴と考え、秋の収穫への感謝を込めて、芋や豆などを月に供える風習があります。お月見は、十五夜の仲秋の名月(今年は9月13日)と、月遅れの十三夜(今年は10月11日)に行われるのが一般的です。

「満月やお月見団子に見立てて、丸く握った焼きおにぎりや、枝豆入りのしんじょうをお重に詰めました。仲秋の名月は別名、芋名月とも呼ばれていて、里芋を供えたそうなので、きぬかつぎや、同じく秋に収穫物されるかぼちゃと小豆のレーズン煮も添えました。9月9日の重陽の節句では邪気払いに用いられる菊花のおひたしも添えて、秋の味覚満載です」(和田さん)


満月のような焼きおにぎりに、はんぺんを利用した手軽なしんじょう、お月見団子に見立てた、きぬかつぎ。木の葉切りにしたかぼちゃ、菊花入りのおひたしが彩りを添えます。

お月見弁当
・うにクリーム焼きおにぎり
・枝豆しんじょう
・きぬかつぎ
・菊花と春菊のおひたし
・かぼちゃと小豆のレーズン煮
・胡麻豆腐
・いちじく

うにクリーム焼きおにぎり

[材料](3~4個分)
黒米入りごはん 適量
塩うに 10g
生クリーム 小さじ1

[作り方]
① 黒米入りの雑穀を加えて炊いたごはんは、一口サイズの丸いおにぎりにする。
② 塩うにと生クリームをよく混ぜ合わせて、①のおにぎりに塗り、オーブントースターやグリルなどで表面がこんがりとするまで焼く。
POINT 塩うにはスーパーで手に入りやすい瓶詰のもののほうが手軽に作れます。

枝豆しんじょう

[材料](6個分)
はんぺん 1/2枚
枝豆(ゆでた正味) 40g
かに(缶詰) 50g
片栗粉 大さじ1/2
酒 大さじ1/2
塩 少々
しょうが(すりおろし) 少々

① はんぺんは包丁で細かく叩き、ボウルに全ての材料を入れてよく混ぜ合わせる。
② ①の種を6等分してスプーンなどで丸め、表面に片栗粉(分量外)を薄くまぶす。フライパンに少し多めの油を熱し、転がしながら揚げ焼きにする。
POINT 枝豆は薄皮を取り除くと彩り鮮やかに仕上がります。



見映えよく料理を引き立たせる
重箱の上手な使い方

お月見は日本古来の行事。重箱に盛り付けると雰囲気も盛り上がります。重箱の使い方にはさまざまな決まり事があり、敷居の高い印象がありますが、今回は難しいことは抜きにして、見映えよく、おいしそうに盛り付けるポイントを和田さんに提案してもらいました。
「お重の出番はお正月のお節料理だけ、というご家庭も多いと思います。我が家では、おつまみを盛り付けたり、洋風のお惣菜をワンプレート風に盛ったり、お客様をお迎えするときにお菓子をのせたり、ふだんからお重を活用しています。お重に盛り付けるだけで特別感が増すので、おもてなしにもおすすめ。ぜひ出番を増やしてください」(和田さん)

重箱の詰め方のポイント
・料理は冷ましてから詰める。お弁当と同じように傷むのを防ぐほか、漆塗りの重箱に熱いものを入れると変色の原因になることも
・重箱の壁面を利用して、崩れにくいものから先に詰める
・色が似ている料理は隣り合わせにしない
・料理と料理の間は、適度に余白を空けると美しく見える
・料理を重ねたり、立てたりして立体感を出すと見映えが良くなる


重箱は継ぎ目を向こう側にして置き、うにクリーム焼きおにぎりを手前に詰めます。


他のおかずに味が移らないように、胡麻豆腐といちじくは、お重に小皿を置いて盛りつけます。胡麻豆腐は市販のものを食べやすく切って詰めます。


枝豆しんじょうは、重箱の壁面を利用して高さを出しながら、お重の右奥に盛り付けます。立体感を出して見映えよく。


きぬかつぎは、重箱の中央に盛り付けます。4個並べた上に1個をのせて高さを出すことで、お月見団子のように見えます。


かぼちゃと小豆の煮物は里芋の左側に、菊花と春菊のおひたしは右側に盛り付けます。かぼちゃは木の葉切りにすると見た目が華やか。


きぬかつぎに黒ごまをふって、お月見弁当の完成です。

秋が旬の芋類や豆類などの食材には、夏の疲れを癒してエネルギーを蓄える力を秘めています。秋の澄み切った空に浮かぶ美しい月を眺めながら、秋の豊かな実りを味わいましょう。

旬をいただく大人のお弁当
春の記事「春を味わう鰆と山菜のお弁当」はこちら
初夏の記事「黒米入り ちらし寿司弁当」はこちら
夏の記事「ハニーマスタードチキンサンド弁当」はこちら
処暑の記事「彩りそうめん弁当」はこちら 



和田千奈(料理研究家)
食べることが大好きな両親のもとで、料理のコツや楽しさを学びながら育つ。大学卒業後は航空会社の客室乗務員として勤務。多忙な生活の中で食の大切さを改めて実感し、食を伝える仕事をしたいと決心する。退職後は料理教室アシスタントを経て独立。現在は、雑誌、ウェブ、書籍、企業販促用のメニューやレシピの開発、フードスタイリング、デモンストレーションを含む料理教室講師などを幅広く手掛ける。
著書に『時短!簡単!からだが喜ぶ魚の水煮缶レシピ』、『毎日 みそ汁 からだ改善レシピ』、『4つのスパイスだけで作れるカレーなレシピ』(以上、DIA Collection)など。
2Box Kitchen Studio 

2019年9月13日公開