七月~涼を味わう竹流しとくず桜
本格的な夏の到来です。夏の和菓子竹流しの水羊羹と、夏の和菓子の定番である、葛を使った「くず桜」をご紹介します。ちいさな和菓子に込められた、日本ならではの美意識に思いをめぐらせながら、お茶の時間にしましょう。
見た目も清涼で香り高い
青竹入りの水羊羹「竹流し」
竹は日本では縄文時代から親しまれてきた植物で、防腐作用があることから器としても重宝されてきました。青々とまっすぐに伸びた涼しげな見た目は、現代でも料亭の器や酒器として席に彩りを添えています。
口どけのよい水羊羹を、青竹の筒に流し込み、笹の葉で封をした「竹流し」は、この季節ならでは夏の風情を感じられるお菓子です。
江戸から明治へと移り変わる激動の時代に茶道の基礎を築き、茶の湯の異端児と呼ばれた裏千家十一代玄々斎がこの竹流し水羊羹を好んだといわれています。
「京都から取り寄せた青竹に、ひとつひとつ手作業で水羊羹を流し込んでいます。青竹が採れるこの季節だけのお菓子です」(榮久堂・永見さん)
竹筒の底にキリで穴を空けると、水羊羹が顔をのぞかせます。青竹のさわやかな香りと、瑞々しい水羊羹の味わいが、束の間、暑さを忘れてさせてくれるでしょう。夏の手土産やおもてなしにもおすすめです。
「くず桜」貴重な氷の代わりに生まれたお菓子
氷に見立てた水無月で暑気払い
もう一つ、初夏から夏にかけての和菓子の定番といえば「くず桜」です。上質な葛粉に水と砂糖を加えた生地でこし餡を包み、透明になるまで蒸し上げたお菓子で、葛の生地を通して餡が透けて見える様子がなんとも涼しげです。
つるんとのど越しよく、口いっぱいに広がる小豆の上品な甘みで、桜の葉のさわやかな香りからも涼を感じます。
「榮久堂では、夏になると紅色の梅餡を葛で包んだ“水ぼたん”もお出ししています。餡にほんのり酸味があって、男性のお客様にも人気があります」
葛を使ったお菓子は、冷蔵庫で冷やしてしまうと透明感が失われて、食感も固くなってしまうので注意しましょう。代わりに器を冷やすことで、涼しさを演出できます。
見た目も清々しく、口当たりもなめらかな夏の和菓子は、お茶の時間に涼を運んでくれるでしょう。この季節にしか楽しめないお菓子で、ほっと一息ついてはいかがでしょうか。
<今月のお菓子>
竹流し
京都の青竹に水羊羹を流し込みました。見た目の清涼感と口の中でほどける水羊羹が夏を感じさせます。
くず桜
葛でこし餡を包んで蒸し上げ、桜の葉で包みました。つるんとした口当たりと上品な甘さが特徴です。
菓匠 榮久堂
住所:東京都台東区蔵前4-37-9
電話:03-3851-6512
営業時間:9:00~18:00
定休日:火曜日(不定休あり)
菓匠 榮久堂さんについてご紹介した記事はこちら。
「お菓子で綴る季節のこと」過去の記事はこちら。
五月~端午の節句の柏餅と粽(ちまき)
六月~夏越の祓と水無月(みなづき)