旬をいただく大人のお弁当 初夏

今年は平年より気温が高く、まるで真夏のような日々が続いていますね。体調が不安定になりやすい季節ですが、手づくりのお弁当で乗り切りましょう! 今月のテーマは「傷みにくいお弁当」です。手軽で彩り豊かなちらし寿司をお手本に、お弁当を傷みにくくするコツや食材選びのポイントを料理研究家の和田千奈さんに教わりました。梅雨シーズンや、暑い季節のお弁当作りにぜひお役立てください。

食材を上手に活用して
時間が経っても傷みにくいお弁当

お弁当は、作ってから食べるまで時間が空いてしまうので、湿気が多く、気温の上がる季節にはどうしても衛生面が気になります。これからの梅雨時期にも安心してお弁当を楽しむために、傷みにくいお弁当を作るコツを和田さんに聞きました。

「お酢や青じそなど、抗菌、防腐作用がある食材を使えば簡単です。特におすすめなのが、今回のちらし寿司。酢を混ぜ込むことで傷みにくくなるだけでなく、食欲がダウンしがちなときも、さっぱり食べられます」と和田さん。

いろいろな具をのせることで栄養バランスが取れるので、おかずは副菜程度で大丈夫。具材を混ぜ込まず、お弁当箱に詰めた酢飯の上にのせていくだけの手軽なちらし寿司です。酢飯にするごはんを炊くときに、黒米を混ぜ込むことで、鮮やかな赤紫色に仕上げています。

■黒米入り ちらし寿司弁当
・黒米入りちらし寿司
・枝豆の梅和え

黒米入りちらし寿司
[材料]
寿司酢(作りやすい分量)
   米酢 大さじ5
   砂糖 大さじ2
   塩 小さじ2
※米酢に砂糖と塩が完全に溶けたらできあがり。上記の分量で炊いたごはん約2合分(約600g)の寿司飯が作れます。作り置きしておけば、寿司飯だけでなくマリネやドレッシングにも使えます。

黒米ごはん(600g)、寿司酢(上記の全量)、いり卵、柴漬け、青じそ(せん切り)、ちりめんじゃこ 各適量

[作り方]
① 黒米ごはんを炊く。白米2合に対して黒米大さじ1と水を大さじ1を加えてよく混ぜ、普通に炊飯する。
② 炊き上がったらボウルや寿司桶などに広げて寿司酢をかけ、少し置いてからうちわなどで冷ましながら全体を混ぜる。バットなどに広げて完全に冷ます。
③ ②をお弁当箱に詰め、いり卵、青じそ、柴漬け、ちりめんじゃこをのせる。

枝豆の梅和え
[材料]
枝豆、梅干し、塩 各適量
[作り方]
① 枝豆は塩ゆでして、ざるに上げて水けをきる。
② 梅干しは種を取って包丁で叩き、①の枝豆を和える。

傷みにくいお弁当作りのコツ
・食材は詰める前にしっかり冷ます
・加熱する食材にはしっかりと火を通す
・防腐、抗菌作用のある食材を取り入れる
・傷みやすい生ものを使わず、乾物を上手に利用する
・食材には素手で触れないようにして、必ず箸を使って詰める


温かいままの食材をお弁当箱に詰めてしまうと、内側に水滴ができて傷みやすくなります。寿司酢を混ぜたごはんやおかずはバットなどに広げて完全に冷ましてから詰めましょう。


いり卵は半熟にせず、しっかりと中まで火を通してポロポロに。抗菌・防腐作用のあるお酢、青じそを使うことで、傷みにくい。ちりめんじゃこは乾物なので水分が少なく、傷みにくいので、この季節のお弁当作りに重宝します。


調理前の手洗いは基本ですが、なるべく素手で食材に触れないことも大切です。今回のちらし寿司のようなメニューは、つい手で具材をのせたくなりますが、必ず箸を使いましょう。



昔ながらの知恵を拝借
ちらし寿司弁当の上手な詰め方

「今回は網代編みのお弁当箱に竹皮を敷き込んでから、ちらし寿司を詰めていきます。竹皮には抗菌・防腐作用があって、通気性、吸湿性にすぐれているので、見た目が素敵なだけでなく、ごはんがしっとりしておいしくなります」(和田さん)

竹皮はインターネットや大きなスーパーや百貨店のお弁当用品売り場などで手に入ります。使用後は洗って乾燥させれば繰り返し使えるので、余分なごみが出ないところも長所です。


竹皮はバットなどに張った水でもどし、やわらかくなったら清潔な布巾やキッチンペーパーで内側の水けを拭き取り、お弁当箱(網代)の底に敷き込みます。


竹皮の上に酢飯を詰めます。竹皮はラップやホイルに比べて通気性が良く、ごはんが蒸れにくく、乾燥しにくいので、時間が経ってもしっとりしています。


いり卵を全体にのせます。分量の多い具材から先にのせていくとバランスが取りやすくなります。


刻んだ柴漬け、ちりめんじゃこをのせます。


防腐・抗菌作用が行き渡るように、せん切りにした青じそを全体にのせ、副菜の枝豆の梅和えを添えて完成。


竹皮の箸を内側に折り込んで、蓋をするようにかぶせ、しっかりと包みます。

おかずいらず、混ぜ込みいらずの手軽なちらし寿司には、食材を傷みにくくする知恵がたくさん詰まっていました。竹皮で包んだり、網代編みのお弁当箱を用いるなど、さりげない演出をすることで、お弁当の時間がもっと豊かで楽しいものになります。持ち寄りのごはん会や、ちょっとしたおもてなしにも喜ばれそうですね。

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和田千奈(料理研究家)
食べることが大好きな両親のもとで、料理のコツや楽しさを学びながら育つ。大学卒業後は航空会社の客室乗務員として勤務。多忙な生活の中で食の大切さを改めて実感し、食を伝える仕事をしたいと決心する。退職後は料理教室アシスタントを経て独立。現在は、雑誌、ウェブ、書籍、企業販促用のメニューやレシピの開発、フードスタイリング、デモンストレーションを含む料理教室講師などを幅広く手掛ける。著書に『時短!簡単!からだが喜ぶ魚の水煮缶レシピ』(DIA Collection)など。
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