旬をいただく大人のお弁当 春

季節の体に必要な栄養がぎゅっとつまって、いちばんおいしくなるのが旬の食材。料理研究家の和田千奈さんに、忙しい毎日の中でも手軽に作れて、旬を味わえる大人のためのお弁当を教わりました。今月は、春の季語にもなっている鰆(さわら)を主菜に、春から初夏にかけて味わいが深まる山菜をたっぷり使ったお弁当をご紹介します。

常備たれと常備菜があれば
お弁当はもっと気軽に作れます!

最初からお弁当を作る、となると少しハードルがあがってしまいますが、和田さんのアイデアはとてもシンプルです。「今回ご紹介する幽庵地や和え衣、きんぴら地などの常備たれを作っておくと味が決まるので、お弁当がもっと気楽に作れるんです。味付けもシンプルなので、レシピでご紹介した食材以外でも、そのときどきの旬の食材や、お好みの食材で、ぜひ作ってみてください」

■春を味わう鰆と山菜のお弁当
・鰆の幽庵焼き(常備たれ)
・こごみの昆布締め
・うどとせりのごま和え(常備たれ)
・うどの皮とにんじんのきんぴら(常備たれ)
・筍ごはん、卵焼き
・空豆のレンジ浸し、しいたけと出汁がらの炒め煮(常備菜)

山菜は、万葉集に収録されている歌に登場するほど日本人にはなじみの深い食材です。今の季節にしか味わえない野趣に富んだほろ苦さを、お弁当でもぜひ楽しみましょう。山菜というと下ごしらえが面倒……と思われるかもしれませんが、今回はスーパーでも手に入りやすく、アクの少ない、下処理の手間がないものばかりを選んでもらいました。


前日までにやっておきたい準備。常備たれ鰆を幽庵地に漬ける。こごみの昆布締めを作っておく。胡麻和えの和え衣と、きんぴら地を作っておく。

鰆の幽庵焼き
[材料]
幽庵地(常備たれ)の割合 酒:みりん:しょうゆ=1:1:1
鰆(食べやすい大きさに切る)1切れ

[作り方]
① 鰆に塩をふって出てきた水分を拭き取り、幽庵地に30分以上漬け込む。
② 汁けを拭いて中火で焼き、皮面に焼き色がついたら火を弱め、中まで火を通す。
※他の魚や鶏肉でも作れます。漬け込んだ状態で冷凍しておくと便利(約2週間保存可能)

こごみの昆布締め
[材料]
こごみ、酢、昆布 各適量

[作り方]
① こごみは塩ゆでし、水にさらして水気をしっかりと切る。
② 昆布の表面に酢を塗り、①のこごみを挟んでラップでぴっちりと包んで冷蔵庫で保存する。半日以上漬けると食べごろになる。
※冷凍庫で約1カ月保存可能。他の山菜はもちろん、菜の花やアスパラガスで作ってもおいしい。

うどとせりの胡麻和え
[材料]
胡麻和え衣(常備たれ)
 白すりごま大さじ6
 しょうゆ大さじ2
 砂糖大さじ1
 煮切り酒大さじ1
うど、せり 各適量

[作り方]
① うどは皮をむいて(皮はきんぴらに使うのでとっておく)酢水にさらし、水気を切って薄切りにする。せりは塩ゆでし、水気をしぼって食べやすい長さに切る。
② ①のうどとせりに胡麻和え衣を適量加えて和える。
※胡麻和え衣は冷蔵庫で約1週間保存可能。すりごまを使うことで和え物の水分を吸ってくれるのでお弁当にぴったり。

うどの皮とにんじんのきんぴら
[材料]
きんぴら地(常備たれ)の割合 酒:しょうゆ:砂糖=3:2:1
にんじん、うどの皮 各適量

[作り方]
うどの皮とにんじんをサッと炒め、きんぴら地を加えて味をからめる。
※きんぴら地は冷蔵庫で約1カ月保存可能。


今回のお弁当に使った常備菜は、彩りがきれいな空豆のレンジ浸しと、出汁をとったあとの昆布、かつお節としいたけの炒め煮です。


食べる時間が楽しみになる!
おいしそうに見せる詰め方の秘訣

お弁当の時間を楽しむためには、詰め方も肝心。手の込んだおかずや飾りつけのない、いわゆる「地味弁」でも、ちょっとしたコツをマスターするだけで、見栄えよく、おいしそうになります。和田さんがいつも心がけている、詰め方のポイントを教えてもらいました。

お弁当の詰め方のポイント
・最初にごはんを詰めて、お弁当全体のレイアウトをイメージ。
・厚みのある大きなおかずは断面を見せて立てかけるように詰める。
・形が変わるおかずは、隣り合わせでなく対角線上に離しておく。
・小さなおかずは同じ色が重ならないように、最後に足す。
・仕切りや彩りとして笹などのグリーンを使う。


お弁当箱の底に笹の葉を敷き込み、最初にごはんを詰めます。おかずとの境目が少し斜面になるように詰めると、仕切りがなくてもおかずが詰めやすくなります。


卵焼きや鰆の幽庵焼きなど、厚みがある大きなおかずは、断面を上に向けて立てかけるように入れます。こうすることでお弁当に立体感が生まれ、さらにおいしそうに。


こごみの昆布締めは、こごみの葉がくるりと巻いている形がよく見えるように。素材のかわいらしさを見せるのも大切なポイントです。


次に胡麻和えや、きんぴらなど、形の変わる副菜を詰めます。色味の同じものや近いものが重ならないようにすると彩りが映えて見た目も鮮やかになります。


おかずとおかずのすき間に、常備菜の空豆のレンジ浸しと、しいたけと出汁がらの炒め煮を詰めていきます。全体のバランスを見ながら少しずつ詰めるのがポイント。


今回使用したグリーンは笹の葉と木の芽の2種類です。プラスチックのものよりも彩りや香りがグンとよくなります。おかず同士の味が混ざるのを防ぐために、笹の葉をカットしてバラン代わりにしました。冷凍保存できるので、お弁当だけでなく普段のお料理にも使えて便利です。

春の終わりから初夏にかけては風が心地よく、過ごしやすい季節です。お天気のいい日には、お弁当を持ってお出かけしてみませんか? 山や海での本格的なピクニックも楽しいし、近所の緑豊かな公園の木陰でお弁当を食べるだけでも、季節を感じる特別な時間になるでしょう。



和田千奈(料理研究家)
食べることが大好きな両親のもとで、料理のコツや楽しさを学びながら育つ。大学卒業後は航空会社の客室乗務員として勤務。多忙な生活の中で食の大切さを改めて実感し、食を伝える仕事をしたいと決心する。退職後は料理教室アシスタントを経て独立。現在は、雑誌、ウェブ、書籍、企業販促用のメニューやレシピの開発、フードスタイリング、デモンストレーションを含む料理教室講師などを幅広く手掛ける。
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