ミネルバボックスから生まれるストーリーを持ったバッグ

gentenというブランドを創設したときからお付き合いのあるタンナー、バダラッシ・カルロ社。先日、同社の二代目オーナーであるシモーネ・レミさんとお話する機会がありました。話題は、約20年前に遡るgentenとの出会いに始まり、エイジングのこと、シモーネさんが思うgentenを取り巻く人たちの姿など。そんな貴重なお話の数々を第1回に続けてお届けします。


ミネルバボックスがあるからこそ、革本来の存在感を放つ「トスカ」が誕生しました。

両者の想いが一つになり
バッグづくりがスタート

バダラッシ・カルロ社とgentenとの出会いは、ブランドを立ち上げる前に遡ります。創業者である会長が、構想中のブランドに合う素材を探しにイタリアへ。いろいろな革を見て回るうち、出会ったのがバダラッシ・カルロ社のバケッタレザーでした。

「いま振り返っても、偶然ではなく必然の出会いだったと思います」というシモーネさんの言葉に、当時を知らないスタッフも興味津々です。
「会長はブランドのイメージとコンセプトを明確に持っていました。また私は、誰がなんと言おうと、バダラッシ・カルロ社はバケッタレザー一筋でやっていくのだという強い想いがありました。ブランドには、stile(スティーレ)が必要不可欠なのです」(シモーネさん)。

stile(スティーレ)とは、英語の「スタイル」にあたるイタリア語で、格調高い生き方を表す言葉です。ブランドには独自性が必要と語るシモーネさんと会長は、生まれ育った国も年代も異なりますが、革に求める品質、ブランドのフィロソフィーはぴたりと重なったのです。そんな両者の想いが一つになり、gentenは革そのものの自然な風合いを持つバケッタレザーで製品づくりを始めました。

gentenの“顔”ともいえる定番シリーズ「トスカ」。こちらは、ミネルバボックスというバケッタレザーを使用しています。また、旗艦シリーズ「アマーノ」で使用しているのは、ミネルバリスシオというバケッタレザーです。
このミネルバ2種は、gentenというブランドのイメージを決定づける存在でもあります。


ミネルバリスシオを使用した「アマーノ」。gentenらしいナチュラルでシンプルな表情です。

そういえば、gentenには、こんなエピソードが残されています。
新型のバッグをつくるたび、何色がよいと思うか会長に意見を求めると、必ず「チャとノウチャ」という答えが返ってくるのです。どんなデザインでも大きさでも、必ず答えは「チャとノウチャ」。

「その答えは、まったくもって正しいですね。本物のブランドは、素材や色を変えてはいけないのです。ベーシックなアイテムは必ず同じもの。この革を見たら『gentenだ』と印象付けなければ」というシモーネさんの言葉に、私たちも深くうなずきました。

ミネルバ2種の大きな魅力は、エイジングが存分に味わえること。時間の経過とともに艶が出て革の色が変化していき、重ねていくキズはそのバッグだけの個性となります。

ここで浮かんだ疑問は、“革の本場” とも言われるイタリアでのエイジングへの理解です。
「昔から革の文化があり、かつてはエイジングを理解している人は多くいましたが、今ではどれだけ残っているかなという状況です。一方、日本の使い手は理解を示す人が増えていると感じます。いまやイタリアと日本は、エイジングに対する感覚は近しいのではないでしょうか」(シモーネさん)。

「近しい」という言葉はなんとも嬉しく、改めて日本の皆さんにエイジングの魅力をもっと知ってもらいたいという気持ちを強くしました。


シモーネさんには店長会にもご出席いただきました。店長たちは、貴重なお話の数々に熱心に耳を傾けました。


シモーネさんの思う
gentenというブランドとは

"人間も自然の一部である"という原点に立ち返る、という理念のもとに生まれたgentenは来年で20周年を迎えます。これまで長いお付き合いをしてきたシモーネさんにとって、gentenの姿はどのように映っているのでしょうか。

「gentenのバッグは、単なるバッグではありません。使う人たちのストーリーが入っています。品物と人が重なるイメージで、イタリア語で言うならば『uomo prodotto(ウォーモ・プロドット)』。日本語にするのは難しいですが、gentenを持つことで生き方を体現しているという意味では、『体現者』と表現していいかもしれませんね」(シモーネさん)。


 ワードローブは決して多くないものの、その人らしいものを持っている人。
何をするにも十分に時間をかけ、見識と共に物事を判断する力を持っている人。
そして、選んだバッグが、いまよりも3年後に価値が増すことを知っている人。

gentenのバッグをつくる人、使い手につなぐ人、使う人。そんなgentenを取り巻く人たちについて、シモーネさんはこんな言葉で表現しました。それは、暮らしにstile(スティーレ)を持った人と言いかえることができそうです。

「混同されがちですが、stile(スティーレ)とモードは異なるものです。stile(スティーレ)はずっと続く変わることがないもの。一方、モードは時代の流れによって移り変わります。gentenには、これからも独自のstile(スティーレ)を持ち続け、確かな品質のバッグをつくり続けてほしいと思います」(シモーネさん)。
この、力強くもあたたかなエールの言葉をいただき、スタッフ一同は、感激しながら貴重な時間を終えました。 


2回にわたってお送りしたシモーネ・レミさんの貴重なお話、いかがでしたでしょうか。バケッタレザーを使用したバッグの製造工程を遡ると、シモーネさんが鞣した革に行きつきます。皆さんもお店でバッグを手にしたときは、バケッタレザーという素材に少し想いを馳せてみませんか。いつも以上にgentenのバッグが魅力的に感じられるかもしれません。


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