「トマリ」と「スムリ」に吹き込んだ、大島紬のモチーフと受け継がれる技

悠久の自然と職人の技が作り出す奄美大島の伝統工芸。そのスピリットを盛り込んだ、gentenの第一和「紬」シリーズの2018年秋冬コレクション。布ものバッグの「トマリ」と、ミネルバリスシオを用いた「スムリ」の登場です。


デニムジャガードの生地に
自然の基本柄を織り込んで

まず、ご紹介するのは「トマリ」です。
奄美大島に伝わる本場大島紬の柄は、時代や技術の変遷によって移り変わってきましたが、基本柄の主体となるのは、自然の草花などがモチーフ。「トマリ」のテキスタイルは、そんな花やヒバの木、風車などの基本柄を組み合わせたもの。デニムジャガードのしっかりとした生地なのですが、意外にも軽く、季節を問わず気軽に持てるのが大きな魅力です。

生地は、太番手のスラブ糸を織り込むことで生地にテクスチャーをつけています。
厚手でしっかりとした素材感なので、裏地は付けずに一枚仕立て。バッグのなかで物がスラブ糸に引っかかったりしないよう、表側にだけ凹凸が出るような織りにしました。汚れが目立ちにくいのも嬉しいポイントです。



裏返してみると印象がガラリと変わります。

連なる柄が斜めになっているのは、生地をバイアスにとって裁断したためです。流れと奥行きが出て表情が豊か。まっすぐ裁断していたら、もっと硬い印象のバッグになっていたかもしれません。


タウンでも旅の相棒としても
小サイズは和装にも


「トマリ」は、大・小の2型で、カラーはデニムとグレーの2色です。どちらも国産の牛革でハンドルを付けました。
大は、荷物の少ない方なら1泊2日の旅行にも行けそうなサイズです。一般的な巾着タイプに見えますが、両サイドにスリットを入れることで口が大きく開き、物の出し入れがラクなこと間違いなしです。
全体にギャザーが寄るデザインの大とは異なり、小は、サイドにギャザーが寄って正面はフラットになるつくり。端正なルックスなので、和装のときにも活躍しそうです。



店頭にある秋冬のカタログには写っていないのですが、大・小ともに同柄・同色のポーチを付けました。お財布などの貴重品は、ポーチに入れてバッグにインすると便利です。もちろんポーチ単体でも使えるので、旅先でも重宝しそうです。


奄美の土だからこそ生まれた
天然の染色方法「泥染め」


鹿児島県・奄美大島の本場大島紬に着目したコレクション「紬(つむぐ)」。その一つとして登場したのが「スムリ」です。「スムリ」は奄美大島の言葉で「染める、染まる」という意味を持ちます。

 
「スムリ」についてご紹介する前に、本場大島紬の泥染めについて少しだけ。
奄美大島では、古くからマングローブやウコンのほか、テーチ木というバラ科の植物を用いた植物染めが行われてきました。毎日身に付ける着物などを染めていたわけですが、偶然、テーチ木で染めた着物に田んぼの泥が付き、渋い黒色に変色したのです。これをきっかけに天然の染色方法、泥染めが行われるようになりました。

 
でも、なぜ泥によって布が染まったのか。それはテーチ木などの植物に含まれるタンニン(渋)が、泥に含まれる鉄分によって酸化したためです。
では、泥であれば何でも染まるのかというと、そうではないのが染色の奥深いところ。鉄分をたっぷりと含んだ奄美の土だからこそ泥染めは成り立ち、限られた地域でのみ本場大島紬の技術が受け継がれているのです。


細部に手仕事の味わいを感じる
泥染めから生まれたオンリーワン


天然の染色方法だからこそ、化学染料にはない奥深い色に仕上がる泥染め。「スムリ」は、そんな泥染めの伝統的な手法と理論を研究し、技術を応用してたどり着いたシリーズです。
シンプルにいえば、「スムリ」は染色ではなく“反応”で色をつくっています。鉄分を主体として、泥のなかに含まれる多用な成分を組み合わせることで革が発色するのです。

仕上がった色は、自然ならではの曖昧さがほかにはない個性になっています。単純な黒でもなく濃茶でもなく、光の加減によっては青みがかかって見えることも。「純然たる黒は自然界に存在しない」と言われますが、まさにそれを表すような色です。

 
「スムリ」は、ワンハンドルのショルダーとトート、斜め掛けもできるショルダーの3型があります。いずれもハンドルに用いたのは、gentenの旗艦シリーズ、アマーノで使用しているバラダッシ・カルロ社のミネルバリスシオ。深く濃いボディの色との相性は抜群です。エイジングによる変化を味わえるのは言うまでもありません。

菱目打ちという道具であらかじめ革に穴をあけてから手縫いしています。

バッグの上辺には、太番手の糸でステッチをあしらいました。菱目針でひと針ひと針、職人が手縫いしたもので、手仕事の魅力が存分に感じられます。



底面は、製品をつくる際にどうしても出てしまう半端な革も余すことなく活用し、それぞれの革が持つ個性を組み合わせて豊かな表情に仕上げたパッチワーク仕様。ふだんは見えにくい底面ですが、バッグを肩に掛けたときや電車の中などで膝の上に倒して置いたときなど、ハッと目を引きます。

凝ったデザインというだけでなく、環境に配慮したgentenらしさが宿る部分でもあります。

奄美大島の伝統工芸のスピリットをモチーフにした、第一和「紬(つむぐ)」シリーズの2018年春夏コレクションの記事はこちら。
「アキナバラ」
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