奥州の田んぼから、銀座SIXへ。 人にも環境にもやさしい「米エタノール」雑貨

銀座SIX内のgenten monococoroの店頭には、岩手県、奥州産の無農薬のお米から作られたエタノールを原料としたアウトドアスプレー、消臭スプレー、石鹸がディスプレイされています。これからの暑い季節や旅先で活躍しそうな、これら米エタノール雑貨は、「発酵で楽しい世界を!」をコンセプトに、発酵技術を中心としたバイオマス事業を行う「FERMENSTATION」とのコラボレーション商品です。代表の酒井里奈さんにお話を聞きました。


「眠っている田んぼを生き返らせたい」
農家の方の強い思いが事業へとつながりました


gentenスタッフ FERMENSTATIONさんは、休耕田を活用して無農薬で作られたお米からエタノールを作り、それをアウトドアスプレーや消臭スプレーとして商品化。副産物としてできる米もろみ粕を石けんの原材料にして、さらに鶏や牛の飼料にする。その鶏の糞が肥料として田んぼに戻るという、自然の力を活かした素晴らしい循環のシステムをお持ちです。酒井さんがお米からエタノールを作ることになったきっかけを教えてください。

酒井 私はもともと銀行に勤めていたのですが、NPOの支援事業に携わったことがきっかけで、生ごみを燃料に変えるバイオ燃料に関心を持つようになりました。10年間務めた会社を退職して、東京農業大学の応用生物科学部醸造科学科に入ったのです。

そのころ岩手県の奥州市では、放棄された田んぼが多く、全体の1/3が休耕田などになっているという問題を抱えていました。お米を燃料に変えて車を走らせることはできないか?と市から相談を受けた農大の教授が実証実験に参加することになり、私も手伝うことになりました。実験を重ねた結果、お米からエタノールを作るところまでは実現できましたが、燃料化はコスト面で難しかったので、化粧品を作ることになり、事業として私が引き継ぎました。


gentenスタッフ お米がエタノールになるまでには、どんな工程があるのですか?

酒井 収穫したお米に麹と酵母を加えてゆっくり発酵させます。菌というのは放っておいても勝手に「発酵」という仕事をしてくれるから、本当にありがたいですね。丁寧に発酵させたもろみを蒸留し、ゆっくりと時間をかけてエタノールを抽出しています。


子どもやペットも安心して使える
天然のものだけで作られたスプレーと石鹸

gentenスタッフ ほのかにお米を感じる、やさしい香りですね。このエタノールを原料に作られたのが、genten monococoroで取り扱っている「アウトドアスプレー」と「消臭スプレー」ですね。社内では「落ち革」と呼ばれるのですけれど、革製品を作ったときに余った革を利用して作った、ライフスタイルを象徴する家を模したストラップをつけました。

酒井 このストラップがとても素敵だし、便利なんです。 消臭スプレーはカーテンの横にかけておけるし、アウトドアスプレーはバッグの持ち手に吊るしておけば、使いたいときにすぐ使えます。「落ち革」が使われているところも、なるべく無駄なものを出さずに、継続可能な事業をしたいという私たちのコンセプトともぴったりだと思いました。

消臭スプレーは、小さめの鞄にもすっぽり入ります。

gentenスタッフ 商品についてお話を聞かせてください。まずは消臭スプレーですが、一般的に消臭スプレーは香りの強いものが多く、天然原料のものは他であまり見かけませんよね。

酒井 身の回りのことだから安心して使いたい、余計な香りは要らない、というお客さまの声に応えて無香料にこだわって作りました。お米から作ったエタノールに、消臭や脱臭、水質浄化効果を持つ天然のバクテリアを配合しているので、人にはもちろん環境にもやさしいんです。トイレみたいな狭い空間でも、赤ちゃんのおむつ替えの後や、ペットのいるご家庭でも安心して使っていただけます。



gentenスタッフ アウトドアスプレーは、虫よけスプレーとは思えない、爽やかな良い香りですね。空間にシュッとするだけで、リフレッシュ効果がありそうです。

酒井 香水感覚で身にまとってほしいと思ったので「虫は嫌うけれど人間は好きな香り」を目指しました。新潟の杉蒸留水とヒマラヤの精油を使い、シトロネラ、シダーウッド、ユーカリ、和ハッカなど、虫が嫌う成分をベースに配合して、柑橘系の「レモングラス」と、華やかで品のある「パルマローザ」の2種類を作りました。ルームスプレーや、マスクスプレーとしてもおすすめです。


gentenスタッフ 洗顔石鹸は、お米からエタノールを作る過程で生まれる成分を活用して、FERMENSTATIONが最初に作られた商品なのだそうですね。

酒井 私たちは「米もろみ粕」と呼んでいます。米ぬかや麹、酵母など、肌に良い天然成分がたくさん含まれていて、ヒアルロン酸保持効果もあり、保湿力がとても高いんです。これに米ぬか油、ホホバオイル、アルガンオイルなど良質の天然オイルを加えて、しっとりタイプと、さっぱりタイプの2種類を作りました。この米もろみ粕の一部は飼料として鳥に食べさせ、卵や肉などの加工品の開発も行っています。

gentenスタッフ FERMENSTATIONさんの活動や商品と出会ったとき、直感的に「これだ」と感じたのはそこなんですよね。田んぼからスタートしてエタノールを作り、商品化するだけでは終わらない。いろいろな人や物、事業がつながって循環していくシステムに強い尊敬の念を抱いています。それから稲や米というのは、日本人の食の原点でもありますよね。人にも環境にもやさしいライフスタイルを提案させていただける商品なのでgenten monococoroの店頭にもぜひ置かせていただきたいと思いました。

酒井 gentenさんはすごく好きなブランドで、FERMENSTATIONスタッフにもファンが多いです。奥州の田んぼから、銀座SIXという東京で一番かっこいい、世界中の人が集まる玄関口ともいえる場所に、商品をお届けできることも嬉しいですね!

 

酒井 里奈
国際基督教大学(ICU)卒業。富士銀行(現みずほ銀行)、ドイツ証券などに勤務。
発酵技術に興味を持ち、東京農業大学応用生物科学部醸造科学科に入学、09年3月卒業。同年、株式会社ファーメンステーション設立。研究テーマは地産地消型バイオエタノール製造、未利用資源の有効活用技術の開発。好きな微生物は、麹菌。好きな発酵飲料は、ビール。東京都出身。

受賞歴など
日本政策投資銀行 DBJ第3回女性新ビジネスプランコンペティション
特別賞「地域イノベーション賞」受賞
ブリティッシュ・ビジネス・アワード(BBA)2014 Community Contribution 受賞
日本起業家賞2014ファイナリスト
Creative Business Cup 2014 日本代表
ソーシャルプロダクツアワード2014